ショートショート 1121~11302020.07.29 14:181121.ある日友人が消えていた。携帯からも名簿からも、私以外の人々の記憶からも。だから私は友人との思い出話を本にして覚えている人を探したのだが、世界中の読者の中には未だいないらしい。もうフィクションなのか思い出なのかもわからない友人についての本は、今年で友人の背丈を超す。・・・...
ショートショート 1111~11202020.07.22 14:081111.私と友人の記憶が欠けている事に気が付いた。フィルムを切り取った様に、そこだけ何処かに閉まった様に。「あの夜何があったのだろう」文化祭のキャンプファイヤーを抜け出した私達の行方は。鞄に入っていた「走馬灯で待ってるね」と私の字で書かれた手紙は、きっとこの事と関係しているのだ...
ショートショート 1101~11102020.07.15 14:021101.月光、水面の影、粉砂糖、平等なものをあげていく。君の言う親友とは君の人生の役振りであって、それに気付くのはとても怖い事だって、君によく似る私は知っている。午前四時、呼吸、市民プール、平等なものをあげていく。旅に出よう、私が無価値だと示す為の旅を。私は顔も無く四捨五入に消...
ショートショート 1091~11002020.07.08 13:561091.月光色の砂漠、或いは砂時計の中にて私は待っている。頭上にはシリウスが鳴り響く。小舟が砂上に線を描きながら此方へ来た。白い棺桶に似たそれを私はトンと押し返し、遠くなるのを眺めている。──あれは私の死神だ。一番優しい死神だ。君が世界を壊してからどれ程経ったのか、私はもう覚え...
ショートショート 1081~10902020.07.01 13:491081.雪に線を引き、やっとガソリンスタンドに辿り着いた。満タンにして白い息を吐く。ガソリンが切れる前に一番いい場所が見つかるだろうか。海の見えれ所がいい。毎年花が咲く所がいい。ラジオではAIが人類は滅亡したと放送し、防腐処理だけが残る世界で、隣の君はあの日と変わらぬ姿で沈黙し...