ショートショート 1281~12902020.11.30 02:311281.今年も絵葉書が届いた。真暗な星空に白く輝く地面と、地球にない黄色い花が疎に咲く三色の写真。差出人はなく、住所には「月」と一言書かれたそれは仄かに薄荷の香りがする。その夜、私は屋上にて回光通信機で月に向かって返事を出した。随分と上手くなったモールス信号に乗せ、最近読んだ詩...
ショートショート 1271~12802020.11.23 02:201271.鐘が鳴る。甲板へ出るといつもよりカモメが多く、吊り上がった網には数匹の魚と真白い巨大な人間が入っていた。「海は出来損ないの魂が溶けて出来ていて、あれはその結晶なんだ」と父は言った。さようなら、また来世。私は眠る彼女の瞳の色をよく知っている様な気がして、うまく泣く事が出来...
ショートショート 1261~12702020.11.23 02:201261.鐘が鳴る。甲板へ出るといつもよりカモメが多く、吊り上がった網には数匹の魚と真白い巨大な人間が入っていた。「海は出来損ないの魂が溶けて出来ていて、あれはその結晶なんだ」と父は言った。さようなら、また来世。私は眠る彼女の瞳の色をよく知っている様な気がして、うまく泣く事が出来...
ショートショート 1251~12602020.11.16 02:091251.物語の作り方。永遠を探す少年と林檎を捨てる少女を対極に置き、スプーン一杯程の幸福を入れよう。月が生むその夜色が肝心で、胸の凍える心地よい寂しさが次の涙を思い出させる。星製造機のアンテナは冬の海岸に置き、灯台の階段を上がっても、非常口は見つからないよ。おやすみ主人公、箱庭...
ショートショート 1241~12502020.11.11 02:081241.愛とは与える事だと知った日から、オットセイは愛するもの全てに名前を付けた。水死した蝶は「微睡み」海底の月明は「許し」白化した巻貝は「優しさ」曇天を切った彗星は「幸福」と、走馬灯への招待状の様に付けていく。そんな夜には必ず青い夢を見るのだが、その夢の名前はまだ決まっていな...