ショートショート 1211~12202020.09.29 06:151211.満月の夜、今なら何処でも行けそうで、私は無人の屋上にてワルツを踊っていた。するとぽっかり空いた夜の穴から手が伸びて、足に見立てた二本指で私の目の前に立ち一礼をした。月光色の、鉱石の様な指先と手を取り私達は踊る。とても素敵な夜だったから、私は月に恋をして、飛び降りるのは止...
ショートショート 1201~12102020.09.22 06:101201.バラバラになった少女は神様の手術によりその綺麗な所を寄せ集め、青い石になった。「落し物が落し主とは」珍妙な事件に賑わう中、母なる海へ返すという結論が出た。少女が目を覚ますとそこは今迄にない程静かな世界だった。「きっと此処がパライソだ」眩しい程に揺らぐ月が、青い影を海底に...
ショートショート 1191~12002020.09.15 05:561191.三日月ペンギンと月夜に凍った街を歩いて、人間以外見る会をした。斜めに動かないブランコ、白青に照るコンクリート、完璧な影、奇妙な形の給水塔と、未だ君が眠る二階の窓。月がこの街の夜を気に入って、月光に沈め保存した日からどれ程経ったのか、時計達は安らかに午前二時だけをさしてい...
ショートショート 1181~11902020.09.08 05:441181.「曇りだね」「甘い事言うな大雨だ」そう言う友人は濡れた靴下を脱いでいた。私の休みにはよく雨が降り、雨の日には必ず友人から電話が来る。そんな時、私は特別な青い紅茶を出す。硝子越しに泳ぐそれはプラネタリウムの星々や水族館の魚の様で、紅茶の香りに包まれた私達は緩やかに休日を愛...
ショートショート 1171~11802020.09.01 05:231171.おかしな型をした給水塔は曇り空の下に愉快で、廃墟には頭を割られた骨格標本が倒れていた。散歩が上手な事だけが私の取り柄だったのに、全てが平行で、また私は何者にもなれなかった。時間が夜を追いやる。布団越しに聞く食器を洗う音達は実に罪悪感を刺し、今日は月光すらも私を責めにこな...