ショートショート 1031~10402020.05.27 12:551031.「幸福は美しくなければいけないよ。だって君にあげるのだもの。君に似合う薄荷色だといいな、残り香の様に上品で、光に当たれば三千世界の虹を見せ、影に置けば神様のみる夢を投影する。きっと君が死んだ時には冥界の道標となるだろう。そんな幸福を見つけてみせるから、其れ迄一緒にいてく...
ショートショート 1021~10302020.05.20 12:481021.君は無声音で作られた名前に相応しく、詩の余白や、香水瓶の残り香のような人だった。葬儀終わりの曇天の中、どうも君に会いたくなって真新しい骨壷を開けると、中に骨は無く、君に似つかない真っ赤な真っ赤なルビーが入っていた。私の言う君とは一体誰の事だったのだろう。二度と会えない。...
ショートショート 1011~10202020.05.13 11:301011.月光の過剰摂取により少女は眠り込み、次に目覚めた時には白い魚になっていた。埃まみれの部屋を見渡すと見た事のない、美しい金魚鉢があったのでするりと入った。暖かなそれはとても懐かしい気がする。(私は何を思い出そうか)その金魚鉢は目覚めぬ少女を憐んで泣き続けた、少年の成れの果...
ショートショート 1000~10102020.05.06 11:141001.本に挟めた月光は、いつの間にか白い蝶となり今日の月へと羽ばたいた。翌朝庭を見てみると季節外れのモンシロチョウがブリキのバケツに身を浮かべ、其れっ切り。この蝶は自分の月へと帰れたのか知ら。それとも会えぬ月との心中か知ら。風に吹かれる水面は、覚めぬよう、慎重にみる夢によく似...