ショートショート 801~8102019.12.30 03:37801.宇宙の絵を描くと何やら渦巻く音と共に星が回り出した。どうもこれは絵ではなく宇宙だと認識されたらしい。先程までの絵の具の香りは消え、澄んだ炭酸に似た匂いがする。額に飾ったそれは窓になった。私は一体どこの宇宙を切り取ったのだろう。通り過ぎる宇宙人に手を振りながら、隣の宇宙を考...
ショートショート791~8002019.12.23 03:29791.昼の、平穏な海を長方形に切り取って私の棺桶にする。奇抜な現代アートにでもするといい。美術館に飾って九想図でも描いてしまえ。そうしてすっかり骨も溶け、小さな嵐の過ぎた様に過去だけが増えた海が、私を飲み込んだ海が、21g増えた海が、ただの変わらぬ海が、ポツンとそこに浮いていれ...
『え?死刑?』2019.12.18 13:27震災のとき、(15時半頃かな?)いきなりの大地震で驚いて急いで家帰って家のテレビ(2台)それぞれ違う局でつけて、その後、ラジオを適当にまわしてたら、なんか無機質な女の声で「内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓・・・いゃあぁぁぁあ!情報ない津波ぬぬぬぬぬ血がすごい!止血!え?死刑?」ってよ...
発光する巨人2019.12.18 13:25初めて一人暮らしをする事になって、友達二人(A.Bとしておく)を呼んで夜中まで部屋でゴロゴロしながらゲームしたり飲んだりしてた。時刻は夜中の2時回ってて、友達Aが酒足らないから買いに行こうって言って三人で近所のコンビニに行く事になった。行きは夜中でも車がけっこう走ってる大通りを歩...
黒い女2019.12.18 12:54流れぶった斬ってたら申し訳ない、2時間ほど前に起こって心底ビビってる出来事俺はアパートの2階に住んでるんだけど、ベランダに出ると駐車場を挟んで真正面にもう一つ別のアパート(以下B)があるんだそしてその駐車場横の歩道を進んだら、信号を挟んでスーパーがある(つまりベランダからは正面の...
ショートショート 781~7902019.12.16 03:22781.夜中、目を覚ますと枕から何か聞こえた。耳を当てるとそれは鈍い声で歌のような、話し声のような、そんな事を呟いていた。鋏一断ち、切り開いてみると中には何もなく、先程の声も消え、それ以来、私は夢を見なくなってしまった。・・・782.壁に寄りかかった女性が髪を耳にかけ、ふいと私の...
ショートショート 771~7802019.12.09 03:11771.廃墟にて障子に一刺し覗いてみると、そこには爛漫桜が舞った。もう一刺し、そこには波風魚が泳いだ。ぷつり、ぷつり、最後の一つを覗き込むと、向こうから真白い顔が覗き込んだ。身を引くも束の間、頭を掴まれ、ずるり。後には何も無かったように、無傷の障子が静かに佇むばかり。・・・772...
ショートショート761~7702019.12.02 02:59761.春、その桜の上には花魁姿の女性が現れる。誰も届かない、桜の中で茫と枝に座っているのだ。私は物言わぬ彼女を見るのが春の恒例となっていた。今年その桜が切られた。よくある話、桜の下には古い骨が埋まっていたという。無名の墓に桜の落枝を添えた時、やっと彼女と目が合った気がした。・・...