ショートショート 931~9402020.03.30 05:21931.「星座を繋げたあの線が、骨格に見えるんだ」。放課後の理科室、プラネタリウムを前に君が言った。夏休み前の事だった。その年の秋から、僕は望遠鏡を携え夜道を自転車で駆けている。あれ以来僕の夜空は骨格標本の部屋となった。海に連れ去られた彼が、いつか僕の夜空で見つかる時を待っている...
ショートショート 921~9302020.03.23 05:14921.その魔女と友人になる者は、みな寂しがりだった。富豪も野心家も、貧者も敵も猫でさえ寂しさを抱えていた。その度に魔女は内緒で魔法をかけ、彼らに一番の存在を引き合わせた。疎遠になった彼らはきっともう、寂しくは無いだろう。「貴方も早く、私が必要で無くなるといいね」猫は返事をしなか...
ショートショート 911~9202020.03.16 05:05911.夜行列車が海のトンネルを潜る。多重に散った月光は泡沫に影をつけていく。少し寒い海底で、描かれた様な魚の骨が泳いで行く。『お客様へ、決して振り向いてはなりません』見上げる程の水晶が黙として立っている。『帰れなくなりますよ』…目覚めると深夜だった。とぽん。月影に魚の姿を見た。...
ショートショート 901~9102020.03.09 04:58901.夜、ぽさぽさと音がするので見に行くと、そこらに真珠色の何かが積もっていた。雪に似ていたが冷たくはなく、さくさくとしている。降る先を見てみるとそれは月で、どうも泣いているらしかった。僕は涙を抱え、ここで一番高い煙突へ登り、ただその姿を眺めていた。・・・902.僕の爪から花が...
ショートショート 891~9002020.03.02 02:33891.胸ポケットから出したのは、丁度コイン程の、金ぴかに輝く満月であった。『むこうへ行く前に、君にあげたくて』そう言って背を伸ばし、カチリと僕の三日月の隣に並べた。目覚めると僕は机に突っ伏していた。書きかけの小説に完を書いて、ふいと外を見ると、青光る未明の奥に、月が二つおっこち...