ショートショート 881~8902020.02.24 02:25881.「パキン」と君の小指が僕の元へ転がった。夕陽に照った断面には輪を描く赤瑪瑙が詰まっていた。「宝物だ」転んだ君を尻目に僕はそれを掴み逃げだした。それ以来君は小指に絆創膏を巻き、結婚葉書も同じだった。何となく愚かしいそれを捨て、僕は箱を開ける。小さなままの小指は、今も変わらず...
ショートショート 871~8802020.02.17 02:17871.196の回文数が完成するまでに私達は通じ合う事ができるだろうか。その重ねられた式達は歴史と、言わば距離であり、互いに打ち合う振り子に似ている。コツコツ、私達の音は古時計に委ねられ、心の底の融解をはかっている。「私達の数字は何だろう」いつか回るその日まで、私達はゆっくりと式...
ショートショート 861~8702020.02.10 02:07861.「いつか助けて頂いた狸です」私にそんな覚えはない。そう言う前にぞろり家へ潜り込んだ狸達は、早速と宴会の準備をしだした。それからは早かった本物ですよと出された酒は絶品で、余興の化けは前代未聞だ。明け方、酔う頭で狸達を見送る中、「いい宴会場が見つかりましたね」と笑う狸の声がし...
ショートショート 851~8602020.02.03 01:56851.マトリョシカを包む建物を包む大気を包むオゾン層を包む宇宙を包む何かと、神様が信じる思想は似ており、鳥が先か卵が先か問題、ラプラスの悪魔を人間が作った事とその存在に気付いた事とに大差はない。放射する、逆流する。無限に、無限に。流転は膨大な距離を周り、私達はその帰りをずっと待...