ショートショート 661~6702019.09.30 04:19661.プレリードックと散歩をした。少し体を屈め手を繋ぎ、深夜の誰もいないショッピングモールを歩いていた彼は足が短く、抱えた方が優しいのではと思ったが、わざわざ手を伸ばした処をみると、きっと同じ様に歩く事に意味があるのだと思うゆっくり。屈む私と懸命に二足歩行する友人の背中を月光が...
わったっせさん2019.09.26 14:34座棺とは明治頃まで使われていた座った姿勢で納める棺の事です。祖母は大正生まれでしたが、祖母の田舎ではこの座棺がまだ使われていました。祖母が子供の時に近所にわったっせさんという40代の後家さんが住んでいました。このわったっせさんの本名は原田で、何故わったっせさんと呼ばれてたのかは分...
ショートショート 651~6602019.09.23 04:34651.やっと思い出したので、私は君との約束した丘へ行きました。確かにそれは楽園での約束だったので、随分私も変わりましたが、彼女は確かにあの頃の美しい心のまま、一輪の百合となりそこで私を待っていました。星が降る。「待たせたね」そういうと彼女はふるふると揺れ笑いました。・・・652...
ショートショート 641~6502019.09.16 04:26641.地球が水で満たされて、土は記憶から消えました。生きているのは電気とコンクリイトと、ほんの少しの人間で、世界はそれでも回ります夜になると水面と夜空は混ざり合い、浮かべた船に寝転び、ああこのまま地平線から溢れてしまえばどんなに気持ちが良いかとも思うのですが、僕は今日も生きてい...
ショートショート 631~6402019.09.09 04:17631.回廊の内窓から一輪の薔薇が見えるので僕は廻る。その薔薇をいろんな角度から見たいからだ。だが俺は有限で、何周かすると老いに負け私は赤色を目に焼き付け呼吸を止めたどうか、彼は何度も生まれては私を見つけ愛し、そして私は彼を置いて行く。誰か、彼を私から助けてあげて永遠の呪いと罰の...
ショートショート 621~6302019.09.02 03:55621.「命短し、ならば踊ろう」・・・622.世界で一番美しい自殺は、辰砂にくちづけをすることです。世界で一番さみしいものは、愛された途端ひとりぼっちになってしまった辰砂です。・・・623.夏の終わり頃、誰も知らない夜になると、ひゅるひゅると控えめな音と共に花火の影だけが空に浮か...