人形を埋める

小4くらいの時の話。

夏休みになると、父方のじーちゃんの家に遊びに行ってた。

じーちゃんの家は裏が山で、良く一人で虫取りとか工作ごっこをして遊んでた。


その日も山で遊び、そろそろ家に帰る日が近づいてた頃、なんとなくちょっと奥の方まで進んだら、

背の高いイケメンのお兄さんが土弄りをしてたんで、それをじっと見てた。

すると「こんにちは」って愛想良く声をかけてくれた。


俺「何してるの?」

お兄さん「見てごらん」

どうやらお兄さんは穴を掘ってたらしくて、その中を覗いたら変な生き物がいた。


体型はちょっと小柄な男の人なんだが、

皮膚が水色で透けててしわしわで、ゼリー(ジェル?ビニール?)みたいだった。

顔はオッサンっぽくて安らかな顔してて、髪は黒か紺だったか、薄らハゲだった。

で、よく見たら、頭に牛の角みたいなのが生えてた。

あと、何故か鳥の羽が身体中にべたべたくっついてたのが、今思えば不気味。

安らかな顔をして眠ってた(死んでた?)せいか、不思議と怖いとは思わなかったな。


  俺 「これ、何?」

イケメン「作り物のお人形なんだけどね、失敗作だから捨てる事にしたんだ。

     しかし今日は暑いねー」


こっから適当な世間話になって、俺もそれが人形だって完全に信じ込んで、

お兄さんが穴を埋めた所でお互い別れた。


…で、数日後の家に帰る日に、何となくあの謎の生き物の人形が気になって、同じ場所に行ってみた。

そしたら、そこが何故か小さい池になっていた。

ちなみに、この山周辺は俺の縄張りだったから、迷う事は無かったし、一度行った場所はちゃんと覚えてる。

だから、絶対あそこで間違い無かったはずなんだよ。


池自体は小さかったけど綺麗で、(深い水溜りっぽい)隣に祠もどきものがあった。

最近造られた感じの綺麗なものだったんだけど、祠の一部に墨で英文が書かれてた。

英語では無かったのかもしれないけど、アルファベットで間違いない。

全部覚えてないけど、一番目立つ所に大きい字で『Focoio×』?って書かれてたのは、

やけに印象に残ってる。

何か文章の中でも、一番力が籠ってた様な気がする。

一応じーちゃんやばーちゃんにも聞いてみたんだが、きょとんとしてるだけだった。

付いて来てもらいたかったけど、まともに取り合ってくれなくて、結局帰る羽目になった。

俺もすっかり忘れてて、もうじーちゃんやばーちゃんも死んだから、その場所がどうなってるかは分からない。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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