ショートショート 1321~13302020.12.28 03:011321.無花果が薄いガラスの様な音で割れ、中には半分になった赤い星が銀色の煙を吐いており、地面では雨で透けた白砂の深い底で手を握りあって眠る大きな大きな二つの骸骨が姿を現す。それは神話が終わる少し前にいた絶滅最後の巨人の恋人達で、海色をした遠い過去で二人の鼓動は人類を置いて行っ...
ショートショート 1311~13202020.12.21 02:541311.『精神病棟の5号室患者について』大人しく記憶障害を除けば正常である。彼は姉──現在行方不明である少女の話をするのだが、その少女に弟が居ないのは確認済みである。ただ彼女の日記に彼によく似た”弟”が出てくる事、現在は青色だが保護当時、彼の眼は彼女と同じ茶色だった事との関連性...
ショートショート 1301~13102020.12.14 02:451301.世界から喪失した君は神様に並ぶ大きな噂話となった。鬼灯に毒を仕込んだ要因から新しく世界を作った話まで、信仰宗教では君が司る南側にタルトを捧げる祭壇が作られており、誰も君が靴下を脱ぎ捨てる癖がある事も、スマブラでズルする事も知らなくて、私は一人無宗教のまま北側でタルトを食...
ショートショート 1291~13002020.12.07 02:371291.町に突然鉄塔が現れた。どうも施設らしく『月海生物観測所』と看板が付いていた。人の気配だけを残した施設内は静かで、長い廊下に並ぶ見た事のない生物達の解説図を追っていくと最上階の天文台に辿り着き、夜空には真白な鯨が泳いでいた。後日行くと塔は無く、売土地の古びた看板があるだけ...