1041.少女の存在証明
1.少女とは永遠である(性別ではない)
2.永遠とは固定された時間である
3.少女は永遠の中に保存されている
4.少女とは複数の同一存在である(1.2.3より)
5.保存場所は形而下であり、私達の夜であり夢である
6.故に今も何処かで誰かの少女が分離し永遠の中へ溶け、漂っている
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1042.少年の存在証明
1.少年とは少女の対の存在
2.少年は少女の性質と似ている
3.違いは保存場所が「形而上」で「求める」性質がある事
4.故に少年は見当違いな場所でまだ見ぬ少女を探している(1.2.3より)
5.そんな場所にはいないのに
6.最初から独りの少女と寂しさを知る少年は
7.未だ巡り合えずにいる
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1043.半月だと思ったらタコ貝でした。煙草の火だと思ったら林檎でした。星だと思ったらソーダの泡粒でした。路地裏だと思ったら本棚の隙間でした。海だと思ったら金魚鉢でした。夕方だと思ったら琥珀でした。君だと思ったら鏡でした。そこでやっと、この世は偽物の寄せ集めだと気が付きました。
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1044.「さよならを持って少女が逃げた!」
「西へ東へ」
「そっちのこっち」
「あっちのどっち?」
「海底から氷山へ」
「郵便ポストに水晶の影」
「其の胡蝶は少女なりや?」
「遠くで鈴の音がした」
「嗚呼それは、少女が自分の涙へ身投げした音」
「故にこの世は終わらない」
「永遠の残響が世界を包む」
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1045.春の別れが少なくて、
今年の桜は不作です
夏の喪服が少なくて、
今年の星は不作です
秋の孤独が少なくて、
今年の涙は不作です
冬の闇夜が少なくて、
今年の詩は不作です
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1046.午前四時、十字路の信号機達がモールス信号にて秘密の会話をしている。噛み砕いた氷を飲み込むような音を立て、星が鳴っている。恋人達が横断歩道でワルツを踊る。世界が輪郭の中に眠っている。古代魚達がビルの間を泳いでいる。誰かの夢のパレードが通り過ぎる。街の誰かが欠伸をした。午前五時。
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1047.王様が月を作った。「月光は月の欠片が含まれている」と王様は、毎夜月光を集めては瓶に詰めて圧縮していった。そして何年か経った頃、小さな月が出来上がった。「まあ、なんて綺麗だ事」王様はそれを指輪にし、お妃様になる人へプレゼントをした。今でも何処かにある墓の中で、小さな月が輝いている。
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1048.壁一面に飾られた進化の過程をブリキの列車から覗く。陸で息ができるなら私達も空を泳いでもいい筈なのに、きっと皆どこかで溺れている。深刻な呼吸不足は例年通り。タタン、トトン、私と蛋白石の二人旅。古代魚が泳ぐ海底トンネルで、握った切符は「⭐︎」とだけ。金平糖と花蕾、終着駅はまだ遠い。
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1049.電話ボックスから星が飛び上がっていった。僕は手を振り、星が待ち合わせに間に合う事を祈った。
後日届いた封筒には写真が一枚あり、白光る荒野に直置のティーセット、カセットコンロの上で湯気立つ銀のケトル、そして真っ黒な星空だった。裏返すと其処には見た事のない電話番号が書かれていた。
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1050.私の町の氏神様は恐らく猫だ。
この町には猫が多く、他の町には無いらしいが町の随所で招き猫を見かけるのだ。更にお供え物は魚で、氏神様を尋ねれば大抵「昼寝中」と返される。また夜は神様の時間とされ、その同時刻に猫の集会が行われており、それを覗いた事による死亡者が後を絶たない。
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