441.「人魚の生首です」
そう言われ見せられたのは確かに人魚の、紛れもなく君の首だった。
湖で出会い、君は喋れず、だから僕が喋ってて、君は僕を好いて、僕は、だって君の鱗が深い緑に反射してて、果てしなく人魚だったから、でも、
「人間と変わらないじゃないか」
呆れた様な声が会場の後ろから聞こえた。
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442.さっきから部屋の角を見つめている飼い猫と幼い娘。
一緒の方向を目で追っていって
ゆっくりとこちらを見て、
その途端、娘は悲鳴をあげ泣きじゃくり猫は声を荒げ威嚇しだした。
娘に手を引かれ猫の後ろへ回った一瞬、紫色の足が三本、僕の背後に居たのが見えた。
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443.赤い糸くじ、なんていう浪漫的なくじ引きがあった。ニイと笑う狐目の怪しげな店主を尻目に小さな箱から顔を出す赤い糸を引っ張ると、ズルンと男の人が出てきた。
目を白黒させた私達は謝罪やら交通費やら気付いたら消えた店主やら、後日お詫びしますの連絡先やらをドタバタした結果、今日結婚致します
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444.私にはある日課がある。それは一日一回蔵へ入り、広げたままのチェスを一つ動かす事だ。すると翌日不思議な事に敵の駒が動いており、また己の番という訳である。いつしか決まった約束で負けた方は何かを盤に置き、またゲームを始めるのだ
埃まみれの蔵にある足跡は盤に飴玉を置く自分一つだけ
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445.九字切り、狐の窓、指には様々な力が御座います。今回はそんな指を通した簡単に出来る未来を覗き見る方法を教えしましょう。
まず腕を交差し、指を組みましょう。
次にその手を下から内側へ入れてください。
最後です。手の中を覗いてください。未来が見えます。
具体的にはジャンケンとかの。
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446.「地獄は良いぞ、整備は整っているしこの世と同じ様な生活だ。
なんたって野心家や政治家が多いからな!其奴らは大体地獄に落ちてるから、自分の為ならと色々整えてくれるんだ。天国?あんな原始人みたいな生活はしたくないね」
この言葉は悪魔ではなく、化けて出た祖父からの言葉だ。
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447.新しげな財布が塀の上に置かれていた。落し物だろうか、興味本位で財布を開くと、突然そこからぬるんと腕が伸びてきたので驚いて川へ投げてしまった。
次の日、投げた筈の財布がまた塀の上にあった。
そういえば最近、近所で行方不明の話をよく聞く。
やたら綺麗なその財布は今日もそこにある。
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448.今日も私は鏡に向かい、瞼にまるでエラの様な二重を作る。こうしないと私は外で息が出来ないのだ。パタパタと粉を振るい、あっという間に可愛い私。
鏡に映る先程までと違う顔の私と目が合う。私はもう一度、一重を愛せる日が来るのかしら。
その言葉は泡になり、私の中で弾けて消えた。
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449.赤く暮れる階段から女が降りてきたのだが、下段に降りても顔が見えない事に気が付いた。目の前に現れた2メートルを優に超えるその女がコツンと一段降りた。
─あれは顎だろうか。巨大な丸い、灰色の皮膚が見える。もう一段と女が足を上げドス黒い唇が見えたところで、僕はそこから逃げ出した。
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450.私の未来を占ったのだが余りにも平凡でつまらなかったので、とぷんと水晶玉に手を入れてかき混ぜた。
1.2.3とかき混ぜ手を抜くと、星雲の様な水晶の気泡がぐるぐると回り、止まる。
アブラカタブラ
今度の未来で私は世界革命を起こし、そして石油王と飲み友達になる模様。
これは最高に楽しそうだ。
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