451.「五十年後の私へ。
アイツは殺せましたか?」
心に決めたのだ。私を虐めてくれたあん畜生めに必ずしも鉄槌を振り下ろしてやると。
軽い音をたて紙をめくる。
「五十年前の私へ。
無事に射殺しました。」
私は笑いながら可愛いあん畜生のプレゼントを投げ捨てた。
・・・
452.夢の館の地下室には楽園がある。
ユニコーンが走り回るそこには、レースのリボンで目隠しをした少女がストローを吹いて雲を作っていた
「目を開けたら、目覚めてしまう。目が覚めたら、全てが消える」
そう歌う彼女は何処か寂しそうで、この夢を見る度私はいつか彼女を解放してやらねばと遠く思うのだ
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453.私を車に置き肝試しに行った友人達がそのまま行方不明になった。
捜査を頼んだが見つからず、そもそもそんな人達は居ないと言う。
何をバカなと私は友人達の連絡先や家を教えようとしたのだが奇妙なまでに何も思い出せない
だがつい先日、楽しげに私を囲む、見ず知らずの人達の写真を見つけた
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454.四人組の客だけと大変暇なものなのに、暴雨でバイトは休めない。段々と雨は強くなり、この店に集中してるのかと思う程だ
「そろそろ迷惑ね」
そんな中女子会をしていた四人が店から出て、それからすぐ雨が止んできた。噂の晴れ女か、食器を片しに行くと床には何故か四つ程の水溜りが出来ていた
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455.朝露に濡れた椿を見た。もったりと大胆に紅く、それでいて質素な五枚の花弁。吸い付けられるような檸檬色をした、ハイカラなへそ。細く強く伸びる枝に、そして淑やかな黒や緑に輝く大きな葉。
溜まった朝露が花を伝い落ち、やっと目を逸らした。
椿を見ていたのに、思い出していたのは君の事だった。
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456.「笑っている狐、目を丸くして見つめる猫、人懐っこい獺らは平気で人を騙します。奴らの事は信じちゃいけませんよ旦那様」
『成る程、なら酔っ払った狸はどうだい?』
「う〜ん…あまり信用は出来ませんなあ!」
月見の席で出会った彼は太い尻尾も隠さずそう笑い、酒を飲み干した。
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457.目玉の宝石を作ったのだがそれ以来ずっと自室の夢ばかりを見る。
どうもその目を通し部屋の風景が夢に映し出されている様だ。
不気味なので目玉を粉々にしゴミに捨てた。
そう言っていた友人が昨日亡くなった。ベッドの上で頭が破裂した状態で発見されたという。彼は何を見たのだろうか。
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458. 「狸は嫌ですよお」と子狐が泣いた。
「僕ををジッと睨んで、かと思えばいきなり尾を噛むんです。甘嚙みですけど怖いですよお。
あ、でも偶にね、美味しい木の実をくれるんです。僕に寄越して去ってくの」
なんだろなあ、と呟く子狐
地蔵は「仲良くなりたい」と私に手を合わせた子狸の事を思い出した
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459.「 」
発掘された巻貝の化石がパキンと割れ、聞こえてきたのは未知の言葉だった。泣いている様な声が聞こえるそれは、何度も同じ言葉を呟いている。
きっと大昔に誰かが誰にも言えぬ想いを貝殻に詰めて海に投げたのだろう。
「確かに聞き届けましたよ」
声尽きた貝殻に、私は一言付け足した
・・・
460.貴女と空を飛んで、一緒に三日月に座り禁断の実を食べたいんです。
そうして地球の瞬きを眺めながら、芯を二つ、空に浮かべて星にしたいんです。これが私の思う最大のロマンチックです。
無理だと貴女は笑うでしょう。
どうか目を瞑って想像してください。それだけで私は幸福です。
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