満月の夜でした。
夏の始まりのある夜、自転車を漕いでいると海沿いの道にでました。
大海原の上にはトポンと、太陽の熱を包んだような大きい満月があり、
海にはそれから色を垂らしたような、まるで月へと続いているかのような、美しい月の橋が出来ておりました。
ザブン
引き寄せられるように、気が付くと私は月の橋を渡っていました。
海のなかは暖かく、また柔らかな波は私を撫でるようで、
まるでそれは胎内のようでした。
頭までとっぷりと包み込んだ波は、私を抱きしめる幾千の腕であり、
私は深呼吸をし、奥へ奥へと漂って行きました。
気が付くと暗闇でした。
しかしキラキラとした何かが漂い、きっとここが宇宙なのです。
しばらくすると、キラキラと光る何かが私の事を突いたり、怪物のような居出立ちのものが噛みついて来たり、
私は私で、何やら膨張しだし、そう膨らんだかと思うと今度は崩れ始め、
ボロボロボロボロと、身体が解けていくのがわかりました。
私の破片がフワリと浮いて、海面にでました。
そこは空と海の境目などなく、上下左右もわからない、上下左右どこへでも行ける、全てがあって無いような世界でした。
私は海と宇宙に溶け込んだのです。
これが、私が死んだ理由でございます。
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