命日の箱庭にて

自分の命日に閉じ込められた。

雨上がりの輝きもそのままに、セミも時を止めている。

区切られたのは僕の生活空間であるこの街周辺だ。

こんなに明るいのに僕は影を落とさない。


この角を曲がると、走る子供が宙に浮いている姿があって、ここにはあくびをする猫で、あそこには林檎を落とす女の人、ブランコから飛ぶ高校生…


気が付いたら僕はいつも街の大道路にいる。

そこには野次馬と、ひしゃげた車、潰れた僕と無事な猫。

僕が最後に見たそのままの黒い煙、そして僕の手を握る君の姿。

僕がどれだけ近くで見ても、君の顔は動かない。

乾いた太陽の光に輝く、その涙が美しくて。


君のその顔を見飽きる事が出来たなら、僕はここから解放されてしまうのだろうか。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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