通りゃんせ

通りゃんせの響く横断歩道を渡る。

橙色の街灯がジリジリ音を立てて点滅しながら辺りを照らした。

通りゃんせ、通りゃんせ、


どのぐらい歩いただろうか。

まだ端には着かず、湿り気と肌寒さが身を包む。

朽ちた鳥居から彼岸花が此方を見ている。

目があった。気がする。


まだ着かない。

ゲラゲラと笑う狐と、シクシクと泣くおかめの面。

何処かで見知った地蔵の生首。

お前は、誰だ。


まだ着かない、まだ着かない。

背後から皆が見ている。

自分がどこへ帰るのか、はたまた何処かへ向かう途中だったのか。

積み石が崩されていく。

歩かねば。はて、何処へ。


通りゃんせ、通りゃんせ、

歩かねば。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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