171.「コンコン」
夜、窓の外からノックの様な音が聞こえた。
カーテンを開けても何もいない。
「コンコンコン!」
その瞬間またノック音が聞こえた為、怖くなり閉めてその日は寝た。
翌朝、ベランダを見たが、やはりなにも無い。
しいて言えば窓の一番下の所にキスマークと手垢があったぐらいだ。
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172.生徒が「助けてください!」と教室に来た。
どうもトイレの個室が開かなくなり、生徒が閉じ込められたそう。
トイレへ行くと「開けて!」と叫ぶ声がする。
どうにか鍵を壊した瞬間、叫び声が消えた。
不思議に思いながら戸を開けると生徒の姿は無く、便器の上に赤い折鶴が置いてあるだけだった。
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173.「この朽木でキノコを作ると美味しいんですよ」
そう言って見せてくれた朽木は、どれもシミュラクラ現象からだろうか、口を開けた人の顔が付いている気がする。そして丁度体を抱き込む様な腕も見えるのだ。
「これね、全部樹海で見つけたんです」
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174.部屋の外から「にゃあ」と猫の鳴く声がした。
入れてやろうと扉に手をかけたのだが、ふと違和感を覚えた。
鳴き声の位置が異様に高いのだ。
自分の身長よりも高い位置で鳴く猫は一定のリズムで「にゃあ」と鳴いている。ふと足元を見ると、威嚇の態勢をとった猫がいた。
「 に ゃ あ 」
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175.夜、違法駐車した車に若者が『拾ってください』という落書きをした。その車の持ち主は車の中で眠ていた。
その夜、その男が車ごと行方不明になった。そして一週間程で山の奥で発見されたという。
様子はというと車は異様に潰れており、また運転手は「巨人が…」とうわ言を呟いていたそう。
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176.幽霊自動成仏機なるものが開発された今、もはやこの世界には「霊界」等のオカルト的次元は無くなり、それと同時に多次元的であった宇宙の一部分の関わりも切れた。
地球人の大半はその事に気付かず、この時空と進化から完全孤立した『地球』に乗り、見えもしない幽霊の脅威から救われたと笑っている。
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177.その町の大きな神社では、年に一度
座敷わらしの集会がある。
その日になると商店街で人にまぎれ、お菓子やジュースを買うらしいが、行き交う人はその着物姿の子供達になんの違和感を持たないという。
そして違和感に気付く頃には、座敷わらし達は神社の社でワイワイと遊んでいるのだ。
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178.「1つ、怖い話をしようか。
その前に、この廃墟の話知ってるか?4人家族の心中があったんだ。親父がやってさ、母の次に兄よ。妹をほら、この抜け道から逃がしてから。血まみれでさあ、凄い痛かったんだ。包丁で何度もグサグサ刺されて、見ろこの背中!
なあ親友、1つ、怖い話をしようか」
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179.ある日、近所の空き家の塀に
「いるよ↓」
と落書きされていた。
意味がわからないなと思いながらその落書きを尻目に通勤した。
残業終わりの深夜。
その塀の前を通ると、電灯に照らされた「いるよ↓」の落書きの下に、いるはずのない女性らしき影が浮かび上がっていた。
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180.「殺した女を詰めたコンクリートに付きまとわれている」
そう言って男は殺人を自白した。
罪の意識から幻覚幻聴に呪われ自白する人は多い。だが、
「ズリ…ズリ…」
その場にいた警察官全員が黙るほど、しっかりと確実に、男の後ろからなにか重いものを引きずるような音がした。
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