ショートショート101~110

101.昔からよく死にかける夢を見る。

様々な不運により死に直面する僕。

しかしそこに必ず現れ、助けてくれる女性がいる。

ある日僕は車に轢かれかけた。

アッと思った瞬間、背を押され助かった。振り向くとあの女性がおり、そして消えた。

あの女性は幽霊なのか、はたまたこの世が夢なのか。

・・・

102.夢を見た。

金銀財宝、宝石絵画が一面に広がる部屋の奥の山に、君の首が鎮座していた。

部屋に劣らぬそれを持ち上げると、目鼻口、切れ目から赤黒い血が溢れ…

飛び起き、隣の君の顔を見る。

よかった。そのままだ。

ビン越しに口付けをし、ベッドへ潜る。

隣でホルマリン液がゴポリと鳴った。

・・・

103.家で隠れんぼをしていた。

押入れに隠れる。

足音だ。

トタタタ、パタパタ、バタバタ

おかしい、足音が多い。

「ここ?」「ここ?」「ここ?」

沢山の声がする。

そもそも僕は一人で、誰と隠れんぼをしていたのだっけ。

「ここ?」「ここ?」「ここ?」「ここ?」

声がどんどん増えていく。

・・・

104.「私の亡骸を蓮子の花に乗せてください」

私の10年来の友人が亡くなった。

彼は小さな小鳥であった。

夢で彼の言った通り、私は夏の朝、彼を蓮子の上に置いた。

すると蓮子はスルリと彼を包み、水中へ潜り、そして再び浮き上がると彼の姿はなく、そのかわり美しい蛋白石が一つ輝いていた。

・・・

105.深夜、電灯の下で女の人が俯き、泣いていた。

「どうしたんですか?」

『此処にも無かったんです』

「何が…?」

『私の骨が』

ボウッと音を立て突然彼女が燃え出した。

青い炎を上げ、一瞬にして灰になった。

その灰はまた探しに出たかのように、風に流れて行ってしまった。


106.息子に即席で作った怖い話を聞かせていた。

「…で、その女が、」

『顔を手で覆ったまま「私の骨が」って言うんでしょ?』

何故か先に言われてしまった。

『だってパパの隣の、青く燃えてる人がそういってるもん』

隣から、あの時と同じ臭いがした。

・・・

107.「5日後で、お願いします」

襖の奥、寝たきりの祖母がそんな事を呟いた。

譫言かと思っていると『あい承った』と、答える何かの声がした。

次の日、祖母は驚く程に回復し、掃除や料理、裁縫などを私達に教え、更に遺産相続の事もやりだして、

そして5日後、祖母は満足気な顔で亡くなった。

・・・

108.隣に住む奥さんが亡くなった。

庭に立派な芍薬を置いて亡くなった。

管理人の居なくなってから3年程経ったが、相変わらず芍薬の花は咲いている。

「4年前に行方不明になった旦那さん」の話はいつからか禁句となった。

今年の初夏も、真っ赤に咲いてはボトリと不気味に落ちるのだろう。

・・・

109.昔遊んだ蓮華畑の夢を見た。

見知らぬ蝶の舞う其処は昔と変わらず美しくあった。

実家へ帰った時、あの蝶を見た。

紫色のそれを辿ると、着いた所はあの花畑の跡地であった。

蝶は一本だけ残った蓮華に吸い込まれていった。

その蓮華は今私の庭で、仲間を増やし過ごしている。

・・・

110.行方不明になったあの子が、僕の枕元に現れた。

居場所を聞く僕に、彼女は微笑みながら一掬いの砂を差し出すので受け取ると、その中から美しい巻貝が1つ現れた。

あの子はまだ見つかってはいないが、僕の手元には確かにあの貝があり、そしてそれを耳に当てると、彼女と繋がる気がするのだ。


WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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