私はその日、記念すべき100個目の、とある研究資料の入ったビンを持って研究室に向かっていた。
魂。それは多分、世界中の人が聞いたことのある言葉だろう。私は今、魂について研究しているのだ。
「人が亡くなる前と後だと体が21g軽くなる」という話がある。それなら魂とは質量があるものであり、それならば身体からすり抜けるというよりかはもっと、たとえば口のような出るべき場所から出るのが妥当なのではないだろうか。
そして人は亡くなる寸前に最後の一息をつく。ならばその一息が魂だと考えるのが妥当だろう。
そういう事で私は今、もちろんご家族さんに了解を得てからだが、亡くなる人の最後の一息を採集してまわっている。そして今手元にあるのが100個目のものだ。
意気揚々と研究室の扉を開けたその瞬間、生ぬるい突風が私を襲った。
目を瞑り、そして開けるとそこには、大事に棚に仕舞っておいた99個のビンが無残にも床に散らばっている風景が広がっていた。全てが割れている。
はっとして手元を見ると、先ほどの突風でか新しくもっていたビンも床に落ち割れてしまった。
窓も閉まり風が吹く可能性の無いこの部屋で、一体何があって綺麗にビンだけが割れる風が生まれたのかは、今までの科学者人生を振り返っても全くわからないでいる。
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