キツネの刺青の女

恥ずかしながら、俺は風俗大好き人間なのだが、これまで何度か太ももにキツネの刺青(いれずみ)を入れた女に当たっている。

キツネの絵柄や大きさ、色も位置も全く一緒。

最初は同一人物かと錯覚したが、女の顔が違う。定かではないが、体型は似ている。毎回全然違う女なのだがキツネの刺青が共通しているんだ。

女と出会う場所は近所から出張先まで様々。何度かこの話を振ってみたが、いつも怪訝そうな顔をされる。


で、この間パーティーでかわいい娘をお持ち帰りしたのだが、その娘の太ももにもキツネの刺青が入っていた。

いい加減奇妙に思い、それとなく聞いてみたが、これまでのこととつながるような話は得られなかった。


だが、彼女が携帯を開き、それを横目で盗み見たとき俺は戦慄した。

メールを打とうと電話帳を開いたその一覧画面に俺の名前があった。

俺の名字は漢字、読みともにかなり珍しく、同姓同名はおろか、おそらく身内以外では同姓もいないだろう。

しかしなぜかそこには俺と全く同じ名字名前があった。まだ電話番号を交換していないのに。

いい知れぬ不気味さを覚え、その夜は全く眠れなかった。朝になったら女を送る気にもなれず、逃げるようにして帰った。


あれから、風俗通いや女遊びは大分減ったがなかなかやめられない。

いまだにときどきキツネの刺青を入れた女に当たる。そのたびにこの話をするが、皆知らない、わからないと言う。

しかし、最近になって女たちはなにか隠しているような意味深な笑みを浮かべているように思えてきたのは俺の考えすぎか?

今まで会ったキツネの女の人数ははっきりとはわからないが、もう15、6人にはなると思う。

なぜ?

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

0コメント

  • 1000 / 1000