謎の錯覚

ちょっとした錯覚(?)のお話。

大学時代に住んでいたアパートは、細かな砂利が敷かれた路地の奥にあって、路地の出入り口の両側は、各々一軒家になっていた。

片側は生け垣だけれど反対側はブロック塀で、問題なのは、路地の出入り口になっている塀の角の部分。

どうも、このブロック塀の角、地面と接しているところが、U字溝のフタが外れてぽっかりと開いているような気がして仕方がない。

実際に細かな砂利の下に排水溝は通っているんだけど、ちゃんとコンクリのフタがしてあって、砂利が被さっている。

片足落ちるんじゃないかというような穴なんか、当然空いていない。

視界の端で見ていると、黒い開口部が見えている。でも、きちんと視線を向ければ普通に砂利が敷き詰められた路地の地面。そんな感じ。


何度確認してもこの奇妙な感覚は消えてくれず、結局そのアパートに住んでいる間中、ありもしない排水溝の「フタのないところ」を避けて通り続けた。

ずっと自分だけの見間違いだと思っていたら、当時アパートに遊びに来ていた友人たちの大半が、実は同じ錯覚を覚えていたらしかった。

中には、「フタなんかあったっけ?」と穴の存在自体疑わない猛者までいる始末。

何の変哲もない路地の風景に、そんな錯覚を起こさせるどんな要因があったんだか、いまだに分からない。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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