俺はばあちゃん子でいつもばあちゃんと寝てた。
その時に怖い夢を見て起きたことがあった。
たぶん5歳くらい。
夢の内容は、
ボロボロの廃屋みたいのが三軒くらいあって、その手前に堀があり、
そこに信じられないくらいデカい魚が泳いでる、というもの。
最初は笑ってなだめてくれてたばーちゃんだったが、
「魚」と言った途端に顔色が変わった
そして夜中なのにどこかに電話をかけていた。
両親も起きてきて、
出掛ける準備をしている
俺も眠いながら着替えさせられて、
父ちゃんの運転する車で出掛けた。
着いた先は
ひいばあちゃん(ばあちゃんの実家)だった
ばあちゃんが呼び鈴を押すと、
親戚が出て来て
ばあちゃんは「魚でわかったから来た」
とか言ってた。
ひいばあちゃんの部屋にいくと、
ひいばあちゃんが亡くなっていた。
目も口もかっと開いて、
ああ、死んでるんだなと直感的にわかった。
みんながガヤガヤと葬式の手配をしている時、ばあちゃんが俺に教えてくれた。
「私が魚の夢を見ると、必ず親戚が死ぬんだ。
でも今回は見なかった。でもお前が変わりに魚を見た」
だからどうしろということはないが、なんとなく、
そうか、そういうものなのか、と受け止めた。
その後、俺は遠くの大学に進学して、実家を出て一人暮らししている。
ばあちゃんは俺と別に寝るようになってから、また魚の夢を見だしたという。
この間、久しぶりに母さんが電話をよこして、
ばあちゃんの様子が変だから帰ってこいと言う。
入院でもしたのかと言うと、そういうわけではないらしい。
「とにかく帰ってこい!」
母さんの気迫に押され、帰省してみると
ばあちゃんの部屋はもぬけの殻だった。
大切にしていた着物も、
趣味の書道道具も、何もなく、
ただ布団しかなかった。
親によると、何も言わずに急に片付け始めて、
箪笥なんかも全部庭で燃やしてしまったという。
お前なら、話を聞けるかもしれない。
そう言わればあちゃんと話してみた。
「ばあちゃん、何かあったの?」
ばあちゃんは言った
「魚を見た」
「でもあれは本当は魚ではねがった」
「堀でもねえ、壊れた家でもねえ」
そしてばあちゃんは黙ってしまった。
ばあちゃんはその日の夜、
心不全で亡くなった。
その晩、俺は魚の夢を見た。
前はわからなかったが、廃屋にはたくさんの人が居て苦渋の表情を浮かべている。
堀は、堀というより深い溝で赤の様な、緑の様な、気味の悪い色の液体で満たされてた。
魚の背びれが見える。
大きい魚が浮き上がってくる。
人の顔ほどもあるウロコが見える。
いや、あれは人の顔だ。
魚が地鳴りを立てて跳ねた。
魚は魚ではなく、
死人が魚のかたちに集まったものだった。
ばあちゃんやひいばあちゃんの顔があったかはわからない。
でもなぜか、俺も死んだらあの魚になるんだなと思った。
俺も、身辺整理を始めようかと思う。
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