飛頭蛮とは…
「ぬけくび」とも呼ばれ、轆轤首の原型とも言われる中国の妖怪。
昼は普通の人間であり、夜になると突然意識を失い、首が胴体から離れ飛び去る。
そして蚯蚓、百足などを食し、朝になると胴体に戻り、人として目覚めるという。
本人には自覚するところはないという。
・・・
私の部屋と父の部屋は、襖で仕切られている。
私はいつものように、いつもの時間に寝た。
深夜、ふと目が覚めた。襖から漏れる光がまぶしかったせいだ。
また父親がTV付けっぱなしで寝てるのかと思い、TVを消しに父の部屋に入ろうとフスマをそっと開ける。
すると、父親の頭だけが空中に浮き、高速で回転しながら部屋をぐるぐる回っていた。
光はその頭全体から放たれていたのだ。
顔は笑っている。
胴体は布団に横になったままだった。
あまりの驚愕に声すら出ない。
なぜか父と目が合ったら殺されると思い、襖を閉めた。
AM3:00。当然眠れない。隣の部屋からはまだ光が漏れている。
父が起きる6時まで布団をかぶって、稲中卓球部を見つつ気を紛らわす事にした。
外が明るくなるAM6:00
父は起き抜けに1本タバコを吸う。その臭いが襖から漏れて来た。
恐る恐る襖を開ける。
父は私を見て「おはよ」と言った。
頭は胴体にくっついて、いつもの父親だ。安堵と共に涙がでてきた。
深夜に起こった出来事を話すと、急に嫌悪感まるだしの表情に。
「そんなデタラメあるわけないだろう。朝から馬鹿なこと言ってんじゃない」と怒り始めた。
私は泣きながら何度も「首、痛く無い?」と聞いたが、怒るだけ。
その後、父親は特に病気になるでもなく、今も生きている。
あれはなんだったのだろうか。
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