こっくりさん

私が高校の頃のこと。

よくある話だけど、学校でこっくりさんが流行ったんだ。


私の母校は地元の鎮守をどけて作ったらしくて、敷地の隅っこに

そのお社が移築されてた。よく道端にある朱塗りのあれと小さい鳥居ね。

そういうイワクがあるうえに、噂によると祀られてるのは狐らしい。


そのせいか知らんがこっくりさんの占いもやたら当たるらしくて、

私も「どーせガセだろw」と思いつつ友達とやってみた。

でも10円玉の示す文章は「体育教師はヅラだ」とか、そんなのばっかり。

もちろん、悪ふざけして10円玉を動かしてたやつがいたんだが。

そんなことやってるうちにこっくりさんは盛り上がったんだが、

だんだん私は便所に行きたくなって、儀式が終わるまで10円玉から

指を離しちゃいけないってルールを無視してしまった。信じてなかったから。


で、廊下に出て、便所の戸を開けた。

しかし、ドアの先には明らかに便所じゃない光景が広がっていた。

バタン→便所の戸のマーク確認→もう一回開く→やっぱり便所じゃない。


板張りの床の、広い部屋で、ひとが2人いた。

一人は床に突っ伏して号泣している、神主か何かのコスプレみたいな格好のロンゲ兄ちゃん。

もう一人は、それを冷めた微笑で眺めてる美女。今思えば、ちょっと石原さとみだったかもしれない。

いろいろ意味不明すぎて私は固まってたんだけど、そのうち女の方が私に気づいた。

「あっ、○○(私の名)ちゃん!」

やばいと思って逃げようとしたんだけど、男が猛ダッシュでこっちに来て、捕まえられた。

そのまま部屋の中へ連行。


男は私の肩をガクガク揺さぶりながら

「お前らかあああ!」

「俺はあんな馬鹿みたいなこと言わない!」

とかなんとか叫んでた。女は基本的にニコニコだけ。男が暴言を吐いたら止める。

私「あの、便所行きたいんですけど」

男「便所も我慢できないほど締りが悪いのかお前は!」

女「女の子になんてこというの!」

みたいなかんじ。

だいぶ長い時間、このわけのわからん2人に捕まっていた気がする。

男が泣き叫んでいる間に女から「○○ちゃんにはよくしてもらったし、舞が上手みたいだからね」と、女に褒められた。


男の言い分をまとめると、

「ハゲでもデブでも赤点予報でも何でもいいが俺の言葉ってことにしないでくれ。

俺はそんな下品なこと言わない!」

こんなかんじ。

なんとなく「体育教師はハゲ」のことかなあと察しがついた。

私も膀胱がやばかったので、2人に泣きついて、最初に入ってきた戸から帰してもらった。

それで廊下に出られるかと思いきや、ドアの向こうは女子トイレ。

用を足して個室から出たら、まだ戸が開いててあの2人がこっちを見てた。

「馬鹿なことはほどほどにね。守ってあげられるのは子供のうちだけだから」

女の方がこんなことを言って戸を閉めたんだけど、また開けても普通の廊下だった。


いっしょにこっくりさんをした友達がいたので、もうこっくりさんは終わったのかと声をかけたら、職員室に引っ張っていかれた。

そこで話聞いたら、遊んでる最中に便所に行ってから2日ほど私は行方不明だったらしい。

自分としてはあの2人に拘束された時間は30分くらいだと思うんだけど。

虚言癖があると思われたら嫌だから、行方不明中のことは覚えてないということにしておいた。


地元(高校の隣町)の地域行事で神社に舞を奉納したことはあるけど、祭神は男神。

コノハナヒメ?を祀ってる小さい神社(友達の家)で巫女のバイトしたこともあるけど、

友人いわく大層な神様らしいし、泣き叫ぶ男をニヤニヤ眺めたりDQN女子高生を助けてくれたりするとは思えない……

基本的にモノは大切にするけど、スレでよく出る九十九神系にお目にかかったことはない。

動物を助けたりするような機会もなければ、善行らしい善行もしてない。


・神様っぽいと思った理由

和服かチャイナ服かわかんないが、それっぽくて高そうな着物着てたから。

普通の幽霊だったら庶民的な服装だと思う。

・バイトと舞

舞は浦安の舞っていうやつ。

バイトは大晦日~三が日だけ。初詣客に御守りを売ったり、境内で甘酒作ったり、

神社に悪戯する奴が出ないように監視したりする。巫女服は着ない。

・心当たり

三日三晩ぶっ通しで赤の他人のどうでもいい抱負を無理やり聞かされつづければ

普通は鬱になると思うので、本堂に夜食・おやつ・甘酒を差し入れている。

ミスドとかだけど。あとで私が回収して食べる。

それだけかなぁ。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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