ドキュメント映画「非現実の王国で」

↑こちらでも書きましたが今回やっと映像を見る事が出来たので。

簡単に説明すると誰からも見向きされなかった変わり者のおじいちゃん。

その人が入院中、大家さんが掃除のためにおじいちゃんの部屋に入るとそこには、膨大な物語と艶やかな色彩の小説が散りばめられていた。

おじいちゃんの名前はヘンリー・ダーカーまたはダージャー

正しい発音はもはやだれにも解らない。

電王だったら現世に戻れないタイプの人ですね。


彼の人生は否定と挫折で構築されていたと思いきや、亡くなる少し前ぐらいに信頼できる人が出来ていたようで、それはすこし安心しました。


子供時代の不幸のおかげで生まれたばかりの妹は里親に出され、顔も名前も知らなかったそう。そのため子供に強い関心を持ち、養子縁組を長期間にわたり希望していたそう。

しかし叶わなかった。

その為少女少年の写真を集めて、集めることによって今どこかで理不尽な大人の仕打ちにあっている子供たちを守ったという。

それのおかげで彼の小説には少女少年が美しい園で楽しく暮らしていたり「善」側の存在だったのでしょう。


また愛情を向ける先が欲しかったようで大家さんが飼っている犬と仲が良かったようです。

よかったなぁ。



神様は存在しているのでしょうか。

彼は熱心なキリスト教徒だったそうです。

しかし彼の手帳によると彼の小説に出てくる「ヴィヴィアン・ガールズ」

彼女らに会うためには絶対的に美しい心でないといけないらしく、元々キリシタンではありましたが、彼はそのガールズに会う為、熱心になったようです。

毎週毎朝聖体をもらい祈りをささげる。

神の向こうに見える自分の世界のために。


本来物語の作者ならもっとハードル下げれるんですよね。

一日一回神に祈りをささげることを一か月続ければ会えるみたいな。

彼は自分の事を「癇癪もちで、頑固もの」と言っています。確かに子供の頃はいじめっ子に石を投げたりやり返したりしています。嫌な人には嫌がらせもします。

彼はこの性格をとにかくコンプレックスに思っていたようで、「理想の人になる」といった意味でもこの条件にし、自分が作った話に見合う人・・・。もはや自分の物語に操作される形で神を崇拝したらしいです。

彼は小説の中で絶対的な創造神であり、存在であり、作者で熱狂的な信徒だったのでしょう。


しかし、或る時重要キャラクターの写真を失いました。

3か月神に祈りを捧げ、また自分も一生懸命探しましたが願い叶わず、断念しました。

「何故神は力を貸してくれない?こんなにも熱心に祈っているのに。悪いところがあるのなら変えるから、どうか、どうか」

そのことが切欠で物語の少女たちは敵に攻め込まれ、危うい状態に。

また彼も神の存在に疑問を持ち、神への信仰を止めました。

自暴自棄になり小説を書く手を止めていると、ある新聞のコミックが目に入りました。

犯罪を犯した少年が死刑となり、地獄に落とされ地獄で神に祈る話。

これを心底恐ろしいと感じた彼は、改めて神を愛し、小説を再開しました。


また唯一だった友が亡くなり、「アダムとイヴが林檎なんぞ食べたから!」と恨んだそう。


彼が抱いている気持ちと周りが思っている印象があっていないのも印象的でした。

「彼は子供が嫌い」「僕は子供を守りたい」「彼は人に危害を加える人ではなかった」

「僕はすぐに癇癪を起す危険な奴だ」「彼は礼拝の時、必ず後ろに座った。いや真ん中だった」「あまりこだわりはない」

もしかしたら彼の中で善と悪が半々にあったのかもしれません。


物語の中に彼と同じ名前の人が二人出てきます。

正義側と悪者側です。

現実世界で煮え切らない、いやな事があると悪者側にまわるようで、写真を紛失したときは悪者でした。自分が守りたがっていた子供をその手で虐殺する。

これはもしかすると子供時代の鬱憤なのかもしれません。

絞殺するシーンが多く、子供時代にやられ衝撃的なほど苦しく、死を覚悟した経験だったのでしょう。

人を愛し、また同じぐらい憎んでいたのかなぁと。


またラストは二通りあり、一つは敵が降伏しハッピーエンド。

もう一つはこれまでにないほど敵が攻め込んできてバットエンド。


もしかしたら神を信じるあまり神が要望に応えてくれない事も解っていたのかもしれません。


お世辞にも愉快とは言えなかった彼の人生。

神は人ひとりの人生を悲しみに埋めることによって自分の崇高なる信者を作り出し、副産物としてこの物語が出来たのか。この物語を作らせるために彼を悲しみに沈めたのか。

それとも神などいないのか。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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