小説 非現実の王国で 作者ヘンリー・ダーカー


マッチ売りの少女の教訓は「後悔先に立たず」「他人に何かを求めている人には耳を貸そう」

等だと思っています。

あの話聞いた人は少女かわいそう、もし自分の周りにそういう人が居たら手を差し出そう。

そう思った事でしょう。


ヘンリー・ダーカー

1892年4月12日、イリノイ州シカゴで生まれる。

 4歳になる直前に生母と死別。また、妹は里子にだされる。足の不自由な父に育てられる。

 読書が好きで、小学校1年から3年に飛び級をした。

だが、8歳で父親が体調を崩したため救貧院に入り、ヘンリーはカトリックの少年施設で過ごす。

友達とコミュニケーションがうまくとれず、退学を体験する。

 12歳の頃、感情障害の兆候が現れたという理由で、知的障害児の施設に移される。

 15歳で父が死去した事を施設で知る。 

16歳で施設を脱走し、260kmを歩いてシカゴに戻る。聖ジョゼフ病院の掃除人として働き始める。

 19歳の時『非現実の王国で』の執筆を開始。執筆はダーガーの死の半年前まで続けられた。

 33歳の時、教会に養子を申請するが却下。だがあきらめきれず、何度も申請し続ける。

 73歳の時、掃除人の仕事を強制的にやめさせられる。できた時間で自伝を執筆する。

 1972年の暮れ、病気のために救貧院に。アパートの大家でアーティストでもあったネイサン・ラーナーに、持ち物の処分を問われた時、ダーガーは「Throw away(捨ててくれ)」と答えたとされる。ラーナーは、アパートの他の住人と一緒に部屋の持ち物を処分している際に、残された作品を発見して驚嘆する。

 1973年4月13日、救貧院にて死去。ラーナーはダーガーの死後も部屋をそのままの状態で、2000年まで保管した。 

wikipedia調べです。


哀れ。身内はいないし他人に否定されまくりですね。

そして結構行動力がありますね。

それが障害ゆえのことなのか、自分を認めてくれる自分の為なのか。


大家さんがこの作品を発見したとき、ガーターのところへ行き絶賛したそうですが

その時ガーターは顔面を殴られたような、そんなショックを受けたような顔をし、

一言「もう、遅いよ」。


ダーカーは生前

「信じられるだろうか。私は多くの子供と違い、
いずれ大人になる日のことを考えるのが嫌で仕方がなかった。
大人になりたくなかった。いつまでも子供のままでいたかった。
今や私は年をとり、脚の不自由な老人だ。なんてことだ!」

と言っていたそうです。

死に際の人生最後の最後にやっと人から褒められた。

しかし自分にはもう力が残されていない。

もう、遅いんですよ。今更なんですよ。

そういえばかの有名なピカソも子供の絵が描きたい!同じようなことを言っていました。

子供=ピュアなんですかね。

不純物のない絵というか・・・。


小説の正式タイトルは

「非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコ・アンジェリニアン戦争の嵐の物語」

グランデリニアとよばれる、子供奴隷制を持つ軍事国家と、アビエニアとよばれるカソリック国家との戦争を書いた物語です。


正義の軍にも悪の軍にも「自分と同じ名前」の人がいます。

主人公たちを助けたり、また主人公たちを拷問したり。


ヘンリー・ダーカーの事を知っているはとても限られていて、友情関係、恋人、ご近所付き合いもあまり無かったそうで、未だにダーカーなのかダージャーなのかも解らないそうです。


ダーガーと会話したことがある人に聞くと「とてもピュアな人」だったそうです。

暴力を嫌い、言葉を真摯に受け入れる。

それじゃあシカゴじゃ生きていけないよ・・・

かたや作品はグロテスク、拷問、暴力、戦争。愛情、正義、平和。

人間は誰しも必ず破壊本能、残虐性は少なからず持ち合わせているんですよ。

ダーカーさんはそれを物語の中で完結させたんですかね。


否定される世界を受け入れ、肯定される非現実を作ったヘンリーダーカー。


マッチ売りの少女は1848年に発表されたものです。

人は教訓なんか汲んじゃいない。


マッチ売りは凍死するしネロは認められず疑われ亡くなりよだかは燃えてしまうんです。


その場では私なら助ける、手を差し伸べると思っても現実だと無意識に見てみるふりをしてしまうんです。

いじめの加害者じゃないから自分に罪はないと思っている傍観者と同じなんです。

繰り返されるんです。どうしようもなく。


ただ、こういう人がいて、こういう環境下にあったからこそのこの作品を今観ることができると思うと、小さな悪の華の劇の観客者しかり「一人の人生を使った価値があるな」と思ってしまうんです。

それぐらいにこの作品は(残念ながら小説は書籍化されていないのでDVD,関連書を読むしかないのですが)美しく、残酷であり、心が動くのです。


亡くなった今、無事に王国へ行けたのでしょうか。

ヴィヴィアンガールズと一緒に非現実の王国を守っているのでしょうか。


マッチ売りはおばあちゃんの元へ、ネロはパトラッシュと共にキリストの元へ、よだかは美しい一つの星になるんです。


せめて争いが無くなり安静に少女たちと子供のように走り回っていて欲しいです。


WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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