251.「これは王者のDNAよ」
彼女は僕にボトルを見せた。
「人には動く者動かされる者のように色々な素質があるの。最近ね、それがDNAからわかるようになったのよ。
私は科学者だったわ」
「あぁ、貴方はね…あら、私と出会ったのは運命だったみたいね」
『実験台のDNA』
・・・
252.科学的に空中浮遊できると認められた途端、私たちは浮き始めた。
深夜零時、ラヂオとワインとチーズと共に浮かんで月見をするのが私の毎日の楽しみだ。
・・・
253.もじらかの はんくぎゃが はまじって
もうね3んがったた
こはれこれで よなみれしてえまば
まあ、なとんかなのるである。
・・・
254.アンドロイドは稀に自らウイルスを摂取してバグを楽しむ個体がある。
しかしそれをやり過ぎるとバグが慢性化し、次々と不調が出始めてしまうのだ。
これは部品の故障ではなくプログラムの、しかも深い所の不具合になってしまう為修理が難しく、大体はそのまま破棄になってしまうのである。
・・・
255.「これは…壁画だ」
それは壁一面に描かれた山の絵だった。海、植物、そして山が書かれている
そして手前には水を貯めるプールが
「これは、山崇拝の為の協会なのかもしれない。このプールは身を清める為のものもので…」
「しかし、部屋が2つに分かれているのは何かを分けていたのか…」
遠い未来、銭湯は無くなったのだ。
・・・
256.「透明人間になる薬が出来たぞ!飲んでみたまえ!」
「おお!素晴らしい!消えてしまったぞ!」
「そうか、喉も透明だから声が出ないんだな…?ふむ…体温も消えてしまったか…おや、君が書いていたレポートも…君…?おや?このボトルは…?」
「…私はさっきまで何と喋っていたんだ?」
・・・
257.「月に行きたくて紙を42回折ったのですが、高すぎて本当に届いたのかわかりません」
「それを確認するのが君たちだ。
登る準備はできたかい?」
夏休み子どもSF相談
・・・
258.月光に照らされ寒々しく光るコンクリートの間から泳ぎでたのは、大きなクラゲと緑色の半透明の女の子だった。
「空と海の境が消えたから、空を泳いできたの」
ベランダから見上げる僕に彼女が言った。
よく見るとペンギンや鯨までが泳いでいる。
『いつか遊びに行くよ』
だから僕は潜水士になった。
・・・
259.きっと私の救いは死にあったのだ
決死の思いで開いた皮膚から溢れ出たのは鬼灯だった
それはフワフワと浮き上がり、天へ登っていく
私の転がる血溜まりの中からも、陽気にプカリと浮き出ては、この真っ新な空へ吸い込まれていくのだ
きっと空は良い所
安心と共に、私は深く目を瞑った
・・・
260.深夜、大雨、交差点
寂れたコインランドリーと自動販売機
その前で解放の権化とばかりに踊るは二人の透明人間だった
時々車のライトと弾ける雨が反射して、その自由を一瞬写す
123のワルツのリズム
誰も彼らを見ないように、彼らの世界には二人以外いらないのだ
0コメント