131.「旦那様、ご覧下さい。
深さも長さもピッタリでしょう。
品質も最高級で御座います。しっかりと亜麻仁油で磨き致し、蓋裏にも緻密な模様を施しました。
美しさは勿論、寝心地も粉う事なく一級品で御座います。
さあ召ませ召ませ…」
死神の仕立てた棺桶は、死期を縮める程の寝心地であった。
・・・
132.帰宅中、歩いていると空から首吊りロープが降りてきた。
あぁ、人生に疲れ果てた俺への最後のプレゼントかと、俺は躊躇なく首を入れたのだ。
するとそのロープは凄い勢いで上へ引っ張られ、俺の意識は…
天界、ロープを引き上げた仏は項垂れた。
「あぁ、助けようとして地上に手綱を下ろしているのに、何故人は皆、
首を入れるのだ」
・・・
133.踝までの靴下に足を入れたのだが、いつまで経っても先に着かず、終いには片足全てが入ってしまった。
大変な事になったな。
そう思った刹那、何かが私の足首を掴みずるんと全身を靴下の中に引き込んだ。
『都内の一人暮らしの女性が謎の失踪をしました。部屋は密室、そして靴下が一足だけ…』
・・・
134.その封筒の中には何枚かの写真があった。
写真をよく見ると、それは私のアパートの外観だった。
二枚目はその少しアップ。
どんどんと近づいてくるそれは、明らかに私の部屋の窓を目指しており、最後の写真では、カーテン越しに写真を見ている私が映っていた。
「ゴン」
窓の外から音がした。
・・・
135.小学校にて密かに噂になっているこの焼却炉は、願いを書いた手紙をここで燃やすと願いが叶う事実にも似たジンクスがある。
ニコニコと、また切実な顔をして手紙を放り込む子供達の中で叶った願いの代償として将来自分の大切なものが燃え果ててしまう事を知っている子は一人もいない。
・・・
136.その学校には常に燃えている焼却炉があった。
ゴミを燃やしに焼却炉へ行くと、人集りが出来ていた。
話を聞くとどうも音がするらしい。
確かに「ドン、ドン」と戸を叩くような音がする。
確認の為開けてみると、其処には大量の灰と、大きくキラリと光る青い石があるだけだった。
・・・
137.最近ずっと追われる夢を見る。
そして昨日相手の顔が見えたのだが、それは自分の顔だった。
怖くなり友人に相談すると、
「お前それ毎年言ってるな」
曰く、俺は毎年この夢を見て友人に相談し、その翌日には忘れているらしい。
その夜自分に捕まって、
それからずっと夢の中にいる。
・・・
138.「後生です…どうか、どうか…!」
最近夜中になると窓に正座する人影が現れ、何かを頼んでくる。
「何の話だ!」
「後生ですぅ…」
そして先日その影が
「あれ程頼んだのに、酷い…酷い…恨みます…恨みます…」
そう言って消えた
その後特に何も無いが、何かある度にその言葉を思い出す
・・・
139.火葬後トレーを引き出すと叔父の頭に般若の面がついていた
親族や従業員が騒ぎ、そして一瞬皆が目を離した隙にお面は消え、そこに残ったのは燃えずに残った頭蓋骨だった
叔父は女性関係が盛んで色々恨まれていたらしく、多分それは鉄槌という呪いなのだろうと、カチ割られた頭を見ながら思った
・・・
140.「おい!今何してるんだ?暇ならこっち来いよ!」
たまに死んだ友人から電話がくる。
その電話の後ろでは小粋な音楽と笑い声が聞こえ、丁度クラブの様だ。
「いや俺、明日も仕事だから…」
「そっか、大変だな。じゃあまた今度」
ガチャ ツーツー…
毎回あっさり切られる電話から耳が離せない
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