花の想い

蒸し暑い夏が過ぎ、夕方が少し涼しくなってきたので私は散歩に出かけた。

ゆっくりと夜が近づいているのを感じながら歩いていると、地面に小さな花が咲いている事に気が付いた。

そうだ、部屋にでも飾ろう。

そう思い、私は屈んで花の根元を掴んでブチリと千切り取ったのだ。


小さな花を手に、私は立ち上がって帰ろうとした。

「ああどうして」

背後から声がした。

振り返るが誰もいない。

「ああああああ・・・」

足元だ。

下を見てみると、さっき私が摘み取った花の横に咲いていた花が、ぽたりぽたりと涙を流していた。


「ううう、彼を摘んだのはあなたですね。

恨めしい・・・。私は彼の事を慕っておりました。

しかし言えず、言わずともただ彼の隣で咲き朽ちられれば幸せだと、そう思っておりました。なのに・・・なのに・・・

ああ恨めしい。でも非力な私では貴方を殺すどころか叩く事も出来ない。

ならば私を彼と同じやり方で殺して、そうして一緒に飾ってくださいな。

きっと綺麗なはずです。きっと美しいはずですから。」


ウッ・・・ウッ・・・

そういってまた、花は大粒の涙をこぼし始めた。


私は泣き止んだ花を片手に家に帰り、庭に穴を掘った。

そして二輪の小さな花を並べ、来世の幸せを祈りながら土をかけていった。


夜が私たちを包み込む。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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