「雨宿りさせてください」
そう言ってその男はびしょ濡れの体を私の下に潜り込んできた。
「いやあ酷い雨ですな。貴方はいつからここに?」
『そうですね、気が付いた時には居ましたんでざっと50年程・・・』
その男は色々な話をした。空が青い理由、蝶々の秘密、隠された文明、
小さな宇宙の作り方や地球の中央にあるシャングリラの話。
私は生まれてこの方そんな話は聞いたことが無く、一気に彼の話に引き込まれた。彼も話を聞き入る私を気に入ったようで、私が催促するたびにニコニコとしなが話をしてくれた。
それから何年、何十年と経ったが、彼は相変わらず私・・・柳の下にいる。
「雨、なかなか止みませんなァ」
『・・・そうですなぁ』
彼が見ている空は、初めて出会った時のまま、あの曇り空なのだろう。
あの日、私は水たまりにタイヤを取られスリップした車に衝突した彼を見た。そして彼は自分から離れ、私の下に入り込んで今に至る。
今日も昨日もここ最近ずっと晴れだ。
彼の雨が止んだら、彼は成仏してしまうのだろうか。
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