ショートショート71~80

71.口に髪の毛が入ったので取ってみると

明らかに自分の髪の毛以上に長く、喉まで続いていた。

スルスルと髪は1メートルほど口から出て、そしてまるで人の頭皮から髪を抜くように、ブヅンと音を立て取れた。

喉の奥から「いたい」と聞こえた気がする。

・・・

72.川であの子が溺れていた。

だから私はとっさに手を掴んだの。

その瞬間、彼女はずっと前にここで死んでいるのを思い出したけど、

どうせ報われない恋なら、

彼女がいるここが私の最果てにしたい

振りほどく彼女の手を握りしめ、

私はピョンと飛び込んで

「ずっと会いたかった」

・・・

73.私は探し物を探すのが上手い。

だから

「見つけたよ、母さん」

父さんが隠した母さんの死体も、

三日三晩探し回ればすぐ見つかるのだ。

・・・

74.私の家の階段には、ちょうどくるぶしぐらいの位置にセンサー式のライトがある。

そして足や物がセンサーの近くにいくと点滅するのだ。

いつからだろうか。

誰も、何もいない筈の真っ暗な1階で

チカチカ、チカチカと

まるで何かを誘うようにライトが点滅するようになったのは。

・・・

75.この部屋は心霊現象が多いのだが、特に事故物件とかではない。

ただ一度、怖い話の題材として使われた事があるようだ。

・・・

76.連続放火魔が捕まった

「炎の中に、彼女が見えるんです。

蝋燭で会っていたんですが、もっと大きいのがいいって言われ、

どんどん大きくなって、それで…」

処刑後、火葬に携わった全員が絶句した

彼の遺体は何故か炭化しており、その顔は恐怖で慄いていたのだ

彼の恋焦がれた彼女とは一体…

・・・

77.友人の家の裏山に紫陽花畑があるという。昔は青い紫陽花が一面に咲き誇っていたのだが、ある時から一箇所だけ赤い紫陽花が咲いたと言う。

「死体が埋まってるんじゃない?」

私がふざけて言うと、

「いやね…年々その赤い紫陽花が広がって、今は3mぐらいの巨大な人型に咲いているんだ」

・・・

78. すりガラスに真っ黒な人影が映っている。

私とガラス越しに対峙する形で立っているそれは、急に首が伸び出した。

ググッ、ググッ。

どんどん伸びる。

ついに顔がガラスより上に行き、

そして、

シュバッ

凄い勢いで身体が上に飛んで行ったのを見て、私は気を失ったのだ。

・・・

79.一枚の真っ黒なガラスがあった。

それは地元の人から『悪魔の入ったガラス』、また願いをすると叶う事から『ガラスの悪魔さま』呼ばれていた。

そんなガラスが割れているのが発見された。

不思議なのは、その割れたガラスが透明になっていた事だ。

・・・

80.夜な夜な不老不死の研究をしていると噂の老人が亡くなった。

研究机の上には意味不明な文字列と、その下には「これでやっと死ねる」と書かれたメモが置いてあった。

死に顔はとても安らかだったという。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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