すなしろさま

自分の小学校にしかない怪談かもしれないが、『すなしろさま』って知ってる奴いない?

自分の学校の砂場は、赤い大きな鉄棒の前にある。

その鉄棒を鳥居に見立てて、お参りをしてからくぐって、砂場と鉄棒に背を向けたまま、

「すなしろさまさがさんせ、うせものひとつてらさんせ」

とか、そんな感じの呪文を唱えて、十円玉を砂場に投げ、

その十円玉をちゃんと見つけれたら、探し物が見つかる。

と言う噂で、上級生が迷子の猫を見つけたとか、財布を見つけたとか、噂が噂を呼び、

クラスの男子は信じる派と信じない派にわかれて、よく盛り上がってた。

信じる派の意見では、『すなしろさま』を本当に信じていないと探し物は見つからないから、見つからなかった時は信じてないのが悪い、と言う事だったと思う。


すなしろさまブームも過ぎたある日のこと。

信じない派のA君が学校に連れてきた妹が、A君と自分を含む友達4、5人で遊んでいるうちに、どこかに行ってしまった。

みんなで手分けして探しても見当たらず、日が暮れ始めたころ、

突然思い出したようにA君が、「すなしろ様の所で聞いてみよう」と言い始めた。

みなおどおどしながらもついていって、鳥居にお参りしたところで、十円玉をもって無いことに気がついた。

誰か持ってないかとか話してると、A君が鉄棒の脇に十円玉が落ちてるのを見つけて、それを拾った。

「かわりがあってよかった」「きっと誰かが見つけれなかった十円玉だろう」「早くやろうよ」

なんて事を友達みんなで言ってたが、A君だけ深刻に何かを考えてるみたいだった。

唐突にA君が自転車に飛び乗り、「いく所があるから先に帰って!」と言い残して走り去った。

その異様な様子に驚いて、自転車で追いかけたB君以外の全員がその場に残され、わけもわからず家に帰った。


後日、B君の話では、A君が目指した近所の小さな神社の鳥居の下で、A君の妹は膝を抱えて泣いていたそうだ。

A君は鳥居の下で十円玉を見つけたから、きっとここだと思ったらしい。

自分たちが高学年になるころ、鉄棒はペンキで青く塗りなおされてしまい、

以来『すなしろさま』の話を聞いたことが無い。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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