臨死体験の話

バイクでタクシーに突っ込んだ

走馬灯は見なかった。うああああああああああああ!って叫んでた。

まばゆくなかったよ。至って普通の明るさだった。 


気が付くと此の世じゃない所にいた。後から聞いたんだけど、ここは天国の一歩手前らしい。

一本道だったんで流れにそってあるいていくと、大きな大きな建物があった。 

宗教的要素は皆無だったなあ。聖母マリアも見なかったし。

もっと奥まで行かなきゃいけないのか、宗教者は違う入口があるのか。

建物の中央に「初回受付」ってのがあった。

全員初回じゃねーか!って思ったんだけど、そうでもないみたい。実際俺帰って来たし。

そこで番号札を取る。銀行方式だな。

その番号が果てしなくて。俺の番号は25000番台なのに呼び出しが17000とか其処らなの。

特にやることもないから、映画館みたいに並んでる椅子に適当に座ってた。 


周りを見渡すと、日本人以外の人もいた。

基本じーさんばーさんなんだけど、若い人たちもいた。

俺は一人椅子に座りながら悲しんでたんだ。

めっちゃ帰りたかった。生き返りたかった。

何て勿体ない人生の過ごし方だったんだろうって思ったよ。


それでもまあ時間は経って

俺の番が近付いてきたんだよね

周りの奴ら見てると、どうも二か所に分かれて行くらしい。

一か所は「定型」

もう一つは「定型外」

郵便物か!って思った記憶があるから、たぶん漢字もあってる。 

でも明らかに外人もその看板見て進んでたから、奴らには英語に見える様なハイテクなのかも。

それで俺の番号が呼ばれたから、真ん中のでかいカウンターに行ったんだ。 

係員が言ってたのは


・定型ってのは普通に天国が地獄の裁判みたいのに廻される

・定型外ってのは肉体的に生きててもおかしくない奴らが希望制で行くとこ。

生き帰れるとしたらこっち。条件は言えない。


若いから定型外選べるし、定型外の方でも可能性はあるかもだって。

それでさ、迷ったんだよね。

条件は言えないってなんだよ!

失敗したら地獄よかもっと怖い場所とかそういうことかよって。

あんまり悪い事しなかったし、ボランティアとかしてたし

どっちかと言えば天国に行ける自信もあった。 

「定型外っての希望します。」

って言ったら簡単な地図渡された。


地図通りに行くと、会議室みたいな場所があった。

扉の隣にまたカウンターがあって、また少し待ってくれとの事。 

階段登ったりしたから、他にも沢山部屋がある感じだった。

今回はすぐに呼ばれた。

部屋に入ると、パソコンの画面があった。閻魔さまいると思ったのに。 

『はい』『いいえ』

で答えて行くタイプだった。

『死を理解してる?』

『本当に定型外?』

『生前の行動に自信がある?』

って感じの(大体合ってる筈)3問答えたら

『定型外希望理由』

って欄が出て来た。

『生前の・・・』のとこは「はい」にした

その方が閻魔様受けいいかなと思って。


んで『定型外希望理由』

ここだ!と思って書きまくった。

文章めちゃくちゃだったと思うけど

もう一回生きてやりたいこと、会いたい人、真面目に生きる約束、親への感謝、人助けする約束、とにかく閻魔様の同情を買うように考えて沢山書いた。 

書いてると、具体的に生への欲望が思い出されて

本当に本当に氏んだのが悲しくなってきて

気付いてたら泣いてた。もう号泣だった。首を過ぎて胸まで涙が流れてた。 


そんでね、気付いたら救急車に乗ってたよ!

左手の指に洗濯バサミみたいのついてた。

体温計が脇に挟まってて、身体がむっっっちゃ寒かった。 


WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

0コメント

  • 1000 / 1000