いんじゃんほい!

当時、社宅住まいだったのだけど、そこの玄関ドアののぞき穴は、

直接目をつけてのぞかなくても、スコープの写した映像を拡大表示する四角い窓みたいのがついてた。

昔だったので、幼稚園から帰って母親が社宅の寄合とかで呼ばれると、一人で留守番してた。

そう言う時に時々玄関がノックされて、スコープに手が映ることがあった。

「いんじゃんほいっ!」と子供の声がするけど、手は子供の手っぽくない大きい手(片手)に見えた。

「いんじゃんほい、いんじゃんほい」と繰り返すので、ドアのこっち側でグーチョキパーを出して応戦する。

何度かやって、こっちが勝つと手は消えて声も黙って、そのうち母が帰ってくるのがお決まりだった。

あるとき、何度やっても勝てなくて相手が帰ってくれなくて、

いい加減疲れて飽きたので「もうやめー」と言ったところ、

子供の声が「あーけーてーあーけーてー」と二回言った。

思わず「いーやーよー」と返して、こっちから「いんじゃんほい!」と勝負に戻して、

何とか勝っていつものパターンになった。

母が帰宅したら自分が玄関でへたり込んで熱出してたんで焦ったらしい。

その後しばらくして、父が転勤になってその社宅とは離れた。

留守番の時は大人しく一人で遊んで待っとけ、勝手にドア開けちゃいけないってのは、

毎度母親の厳命だったので、開けようと思ったことがないのは幸いだったかもしれないね。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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