小学生低学年の頃に、不思議なおじさんを見たことがある。 かれこれ25年も昔のことだから、記憶が所々曖昧なんだけど。
その中で、すごく印象深い言葉だけは、はっきり覚えてる。 季節は、半袖を着ていたから夏か秋だと思う。 夕暮れ時で、空が真っ赤だった。
俺は塾の帰りで、駅前の通りを歩いていると、作業服みたいなのを着たおじさんが歩いてきた。 そのおじさんが、何か手に持ってしゃべってる。 当時は携帯電話なんてSFの中にしかなくて、おかしな人だなって思った。
道行く人たちは、まるでおじさんが見えないように知らんぷり。 今になって思うと、確かに関わりたくない人に見えたから、みんな無視していたのかも。 でも、誰も振り向いておじさんを見ないし、なんか異様な雰囲気だった。
そのおじさんが俺の横を通り過ぎた時に、俺の顔を見ると、 かなり大声で「下がってる!上げて!」って言った。 そして、すぐにビルとビルの間の路地に入っていった。
変なおじさんだな、と思いつつ、俺は気になって路地まで戻ると、そこを覗いてみた。 そしたら、そこは行き止まりの袋小路だった。
あのおじさんは何だったんだろう。
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