無音

10年ほど前、小学生だった私は家で一人、留守番をしていました。 母親に注意もされず伸び伸びとゲームが出来、ご満悦でした。 

 ふと、電話がかかってきて出てみると、 籠もった男の声で『お母さんはあと20分ほどで帰るよ』とだけ言うと切れてしまいました。 「?」と思いながらも子供なのであまり深く考えず、そのまま留守番してました。 

そして20分経っても母親が帰って来ません。 「まぁ、そりゃそうだ。間違い電話だったのかな」ぐらいに思い、ゲームに集中しました。 

 時間を忘れるほどゲームをやってたのですが、 なんだかんだで夕方になり、やがて日も落ち、さすがに「母が遅すぎる」という不安が出てきました。 しかも、そんな不安な時なのに、テレビを付けてみると何故か何も写らない。 

それどころか、ゲーム中は気付きませんでしたが、騒音という物がまったくありませんでした。 元々静かな環境に家は建っていましたが、何の音もしないというのはそれまでありません。 

 おかしいと思い、ちょっと泣きそうになっているとまた電話が。 

「母親だ」と直感的に感じた私は、すごい勢いで電話に出ました。  


『やっぱりxxxx(声が籠もりすぎて聞き取れない)戻すね』


またあの男の声でそう言われた刹那、 頭の中に「パチン」という音が響き渡りました。 

なんだこれは?と思っていると、 いつの間にか窓の外は明るく、近所で車の走る音などの騒音が聞こえていることに気が付きました。 しかも時計まで戻っています。頭の中はもうパニック。 

そして、程なく母親が帰ってきたのですが、その時間が最初にあった電話からちょうど20分後なのです。 私はわけもわからず、とりあえず安心したのか大泣きしてしまいました。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

0コメント

  • 1000 / 1000