屋根裏

俺が小三くらいまでは、よく二歳下の妹と家の中でかくれんぼして遊んでた。 二人とも自分ちのことなんか知り尽くしてるから毎回あっという間に見つかるんだけど、 俺は絶対に見つからない場所を知ってた。 

2階の寝室の押入れに布団が片づけられてるときに、崩さずうまいこと登ると押入れの天井板に手が届く。 一番隅の板はまな板くらいの大きさで、横にずらすと天井裏が覗ける。 懐中電灯を持って入り、中から天井板を戻せば見つからない自信があったが、どうしても入れない事情があった。 

カビっぽい匂いとホコリ、ヘンな虫がいそうってのも大きかったんだけど、一番の理由は天井裏に階段があったこと。 板をずらして顔を覗かせたところから2メートルほどの場所に、手すりのついた下り階段があった。 手すりには、神社とかでお祓いに使う棒の先に蛇腹?に折った紙がみたいなやつがたくさん結んであった。 上半身まで出して懐中電灯で照らすと、下へ向かう階段の踏板までちゃんと見えた。 

さっき言った理由と天井裏に階段がある意味が分からないこと、薄気味悪いのもあって一回も入れなかった。 何度か親にそのことを聞こうとしたこともあるけど、その話を妹に聞かれて隠れられたら見つけられそうにないし、 それでかくれんぼに負けたら癪に障るので、誰にも聞かず話さず自分だけの秘密にしてた。 

中三になったとき、俺と妹の部屋を作るためにリフォームして壁や天井を引っぺがす工事をしたんで、 そのときなんとなく確認したら階段がなかった。 

よく考えてみたらあるはずない。天井裏から階段があったとしたら寝室に必ず繋がるはずだから。 


リフォーム後は寝室だった場所に妹の部屋ができ、押入れはクローゼットになった。 もちろん天井板も張りなおされて、今じゃ天井裏を覗く手段はない。 

今俺は大学四年生で、これはつい先週の話になるんだけど、 リフォームのとき同じく2階に作られた俺の部屋のクローゼットを開けた。 卒業旅行の準備でのスーツケースを取り出すためだったんだけど、クローゼットの天井板なんかズレてる気がした。 普段注意して見るとこでもないから、もともとこうだった気もするし、そもそも天井板は一枚でがっちりとめられてた気もする。 

けど、今たしかにズレているように見えるし、普段見れない天井裏を覗けるチャンスかもしれないので、 スマホの懐中電灯機能を使って中を確認してみた。 

顔を出した位置から5メートルほど先、妹の部屋のクローゼットの少し先の位置に階段が見えた。

 一気に子供の頃に同じものを見た記憶が蘇って、よくあるオカルト話とかを思い出して怖くなった俺は、 すぐに天井板を戻して親のところに行った。 

意味が分からないとか、そんなわけないとか言って全く相手にされず悔しかったので、 証拠写真を撮りにもう一度天井裏に顔を覗かせたら、今度は何もなかった。 親にはくだらない嘘をついたと思われたみたいで、どれだけ詳細に話しても信じてもらえない。 

つい先週のことだからなんとも言えないけど、今の段階では特におかしなことも起きてない。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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