重なる世界

小2の頃の話。

俺は当時経営住宅みたいなところに住んでて、土日は敷地内にある公園で友達と遊びまくってたんだ。 

そんでまあ、夏の夕方ぐらいに、暗くなってきたからそろそろ帰ろうかって感じになったんだ。 ちなみに俺の家は、A棟B棟ってあるうちのB棟で、402号室だった。  


俺は確かにB棟に入り、エレベーターで4階まで上り、自分の家の前まで行った。

で、家の前に立つと、玄関が開いてたんだ。 まあ夏だし暑いからかなって思ったんだけど、なんか変だった。 

朝家を出るころには無かった、暖簾みたいのがあったんだよ。 

暖簾にはなんか難しい漢字が書いてあって、少し怖かった。 

うちの両親は家の模様替えとかが好きで、しょっちゅうしてたから、またかなって思って玄関に入ると、 靴がやたらあって、中で笑い声とかがすげえしたんだよ。 

客かなー小遣い貰えるじゃんとか思って、俺、意気揚々と家に入ったんだ。

「ただいまー!!!」っつって。  


そしたらさ、家の中が急に静かになって、本当に無音状態になったんだ。 は?何?とか思って、もう一回「ただいまー!」って言って居間に行ったんだよ。

そしたら何かよく分かんないけど、もやもやってした黒い影みたいな奴に目だけ付いたのがたくさんいて、 その目が全部俺のこと見てるの。  


すげー怖くなって家飛び出して、部屋番号確認したらやっぱ402号室なんだよ。 で、きっと棟を間違えたんだって思って、階段かけ降りて建物の前に立ったらB棟なんだよ。  

なんだこれって思って、周り見ても誰もいなくて、 夏なのに虫の声一つしないし、1階の部屋からも人の声聞こえないし、車も通らなくて無音。 西側の空だけ赤紫で凄く不気味だった。 

 ほんとに怖くて涙出てきて。 でも外にいても何だし、また家に行ったんだよ。 そしたら今度はドア閉まってて、ゆっくり開けたら暖簾もなくて。

 「ただいま…」って小さい声で言ったら、母親が来て「何してたの!遅いじゃない!!」って怒られたんだよ。 

でも、ちゃんと自分の家になってて安心した。 


どこかの世界では、黒い影みたいな奴に目だけ付いたのが、 玄関に難しい漢字を書いた暖簾をぶら下げて生活してるんだろな。 もしくは、こっちは向こうを黒い影としか認識できなくて、 向うからも、幽霊的な何かとしか認識されなかったのかもね。 

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

0コメント

  • 1000 / 1000