先手必勝

触ったりすることはできないけど、幽霊は普通に見えるし、

やろうと思えば意思の疎通も可能だと豪語する友人の話。


その友人宅に泊りがけで男同士の寂しい酒盛りをしていた日のこと。

夕方頃から飲み始めたせいか、夜更けもそこそこという時間帯に、

俺はべろんべろんに酔っ払って床に転がってた。


いつの間にか寝入ってたようで、頭痛と共に目覚める。

時間を確認しようと携帯を探していると、友人がこちらに背中を向けて

押し入れをじっと見つめていた。

どうしたのかと声を掛けようとした瞬間に気づいてしまった。

押し入れが少し開いており、そこから得体の知れない男が、

生気の感じない白っぽい両目で友人を睨んでいたのに。


思わず声を上げそうになったその時、

「うじゃあああsdjうdgsこあhtく!!」

奇声をあげながら両腕を大きく開いて、

どん!と音を立てながら、幽霊ではなく、友人が、幽霊に攻め入った。


友人と得体の知れない男と両方にびびった俺も、友人ばりの奇声をあげてしまったが、

俺は見逃さなかった。

両目を見開いて驚きながら、頭を押入れのカドに打ち付けてから

逃げるように消えた男を。


後々聞いた話によれば、

「幽霊は驚かされることに慣れてないから、あれが一番効くんだ」との事。

あの幽霊の復讐か呪いか知らないが、その友人はそれから財布を2度無くした。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

0コメント

  • 1000 / 1000