事の発端は、夫が風邪をひいて寝込んだことから始まりました。
今年の7月の終わりの土曜日、2人で出かけていたのですが、
夜、帰ってくるなり「頭が痛い、寒い」というので、早く寝かせました。
どんどん熱が上がっていき、急いで病院に連れて行きましたが、幸い普通の風邪という診断だったので、薬をもらって帰ってきて、夫も薬が効いたのかぐっすり眠ったようでした。
そのとき既に朝方だったのですが、さすがに一緒のベッドでは眠れず、ただちょっとホッとして、リビングのソファで少しうたたねしてしまいました。
暫くすると、私を呼ぶ声が聞こえた気がして目が覚めました。
声は寝室から聞こえていたので、急いで行ってみると、夫が大きな声で歌っていました。
まだ熱は下がりきってないはずで、よく眠っている感じなのですが、何だか一生懸命歌っているのです。
その様子は何と言うか・・・とにかく異様な感じで、私はぎょっとしてその場に立ち竦んでしまいました。
夫は普段からものすごい音痴なので、どんな音程で歌っているのかは分からないのですが、
「すみのあに・・・とうとうと・・・おかありを・・・すえらかす・・・」
と歌っているのは分かりました。
上記の他にも何か言っていましたが、何だかいきなり全身がぞっとするような感覚に包まれて、「熱で頭がおかしくなった?!」とか思いながら、思わずまだ氷がたくさん残っている水枕を夫の頭の下から取り出すと、ふっと歌うのを止めて、すうすう寝息を立て始めました。
意味もなく水枕の水を替えたり、タオルで夫の顔を拭いたりしていたのですが、
特に変わった様子もなかったのでソファに戻り、また寝ました。
その日のうちに大分熱は下がりました。少し気分が良くなったらしい夫に、
私「なんか寝込んでるとき、歌うたってたよ、夜中に大声で。すごい怖かったよ」
夫「え、マジで?全っ然覚えてないわ。何の歌?」
私「何か知らない、変な歌。熱で頭おかしくなったかと思ったよ、びっくりしたわ」
夫「変な歌ってなに?多分頭は大丈夫だと思う」
などとやりとりして、その日は夫が寝ているときに歌うこともなかったので、あのときの恐怖も薄れ、普通に過ごしました。
次の日。大事をとって夫は仕事を休みました。
火曜日の朝、すっかり元気になった夫は朝、ベランダでタバコを吸っていました。
私は台所で食事の支度をしていたのですが、窓を開けていたのでベランダから
「・・・・これが・・・○○(よく聞こえなかった)・・・ねだやしだな・・・」という旦那の独り言が聞こえてきます。
また私はぎょっとしました。「ねだやし」って、「根絶やし?」とっさに、脳内変換してしまいました。
ベランダから出てきた夫に「根絶やしって今、独り言言ってたよね?何なの?」と聞くと、
夫は心底びっくりした顔をして、「はい?根絶やしって?」と逆に聞き返されました。
私「だって、今『根絶やしだな』って言ってたじゃん、そんな怖い言葉使わないでよ・・・」
夫「いや、そんなこと言ってないよ。聞き間違えじゃない?独り言言った?俺・・・」
とキョトンとしているので、それ以上追求できず、朝食を取った後、それぞれ仕事に行きました。
それからは特に変わったこともなかったのですが、8月に入って夫の友達Aさんが泊まりで遊びに来ました。
Aさんは私と夫の共通の知り合いで、結婚後も何度も遊びに来てくれている人です。
で、その日Aさんがウチのお風呂に入っているとき、ドアが閉まっている脱衣所の前を通りかかったのですが、Aさんがあの歌をお風呂で歌を歌っていました。
「とうとうと・・・おかざりを・・・すべらかす・・・たまずさが・・・とけぬうち・・・すみのはに・・・」
何?何かの地域のわらべ歌?と混乱する頭で考えました。でも夫とAさんの実家は県が離れているので地域つながりではないはず。
何か、お葬式でお坊さんが歌うような調子で読むお経のような。
そんな感じの歌で、発音の違いはあれど、この間夫が歌っていた歌と同じだ!と確信しました。
またぞっとするような感覚に包まれ、ひざが震えました。
リビングでテレビを見ていた夫に「ねえ!Aさんがこの間○○(夫)が歌ってたのと、同じの歌ってる!!」
と言うと、夫は「何の歌だよw」と笑いながら脱衣所のドアのところまで来ましたが、ザーッとシャワーの音が響くだけでもうAさんは歌っていませんでした。
お風呂から出てきたAさんに「さっきお風呂で歌ってた歌、もっかい歌って!」と言うと、キョトンとした顔で「え?俺、なんか歌ってた?」と言うのです。
夫「なんか俺が寝込んでたときに歌ってた歌と同じ歌なんだって」
Aさん「何?それ今時の歌?」
と、本当に分からない様子だったので、私は怖くて、震えました。
私の様子に2人はちょっとびっくりしたのか、「まぁ気にすんなよ。酒飲もう」と明るく言ってくれ、
とりあえず3人でお酒を飲んで、その場は何とかやり過ごしました。
それから3日後。私は仕事帰りによく駅前のスーパーに寄るのですが、その日も激混みのレジに並んでいました。
私の前には3人ほど並んでいたのですが、すぐ前にいるおじさんが「あっ。あれ忘れた」と言って私の顔を見て、
「ごめんなさい。ちょっと、すぐそこにあるヤツ忘れたから、カゴ置いていくから、ちょっと、いい?」と言いました。
要するに、レジの列から離脱せずに、買い忘れたものを取ってきたいということなんだろうな…
私の後ろにも並んでいたので私はなんとも答えようがなく、苦笑いをしてごまかしたのですが、おじさんはカゴを置いてその場を離れ、しばらくして青のり?を持って列に戻ってきました。
おじさんも私もレジを終え、私がバッグに買ったものを詰め込んでいると、右肩をポンと叩かれました。
振り向くとさっきのおじさんでした。「さっきはありがとね」と言うので、とっさのことで「いえ・・・」と言うと、
私の耳元で「すぐには来ないよ。たまずさがとけぬうちは、ねだやしにならないからね」
と言って、また肩をポンと叩かれました。
私はもう、冷や水を浴びせられたようになって、固まってしまいました。
私が何も言えないでいると、おじさんはさっさと荷物を持ってスーパーの入口に向かって歩きはじめましたが、スーパーの入口を出たとき、入口のガラス越しにいきなりパッと消えました。
幽霊ってスーパーで買い物するの?
百歩譲って、もし人間だとしても、あのおじさんの言葉は何なの?!怖いよ!!
叫び出したくなるのを押さえて、家に帰りました。
帰ってから「たまずさ」など、歌のキーワードをググったりしてひたすら調べて、単語の意味としては分かりましたが、
(たまずさ=手紙)何のことを言っているのか意味がつながらず、怖くなってやめました。
その週は夫の帰りが遅く、また疲れていた様子だったので何も話しませんでした。
週末、お盆休みという事で、2人で夫の実家にお墓参りをしに行きました。
お墓参りをしたその夜、実家に泊まりました。
就寝中の事。
何かの気配がして起きてみると、夫が布団の上に正座していました。
驚いて「どうしたの!?」と言ったら、
夫「なぁ・・・○○(私)、なんか前俺が『根絶やし』って言ったって言ってたよな・・・」
私「何なの?!・・・言ったけど・・・どうしたの?」
夫「見た。さっき。なんか、十二単みたいな何枚も重ねてる真っ白の着物着て、髪が長いんだけどもう、ぐちゃぐちゃの髪で、真っ青でやせ細った女の人。着物と髪の毛、長いから引きずってる感じの・・・」
私「夢で?」
夫「いや・・・夢かもしれないけど、『根絶やし』って言われた気がした。わかんないけど」
私「・・・・・・・・・」
夫「俺、実はその人見るの2回目なんだよ。小学生のとき、1回見たけど、そのときは廊下を渡っていっただけだった」
夫の実家は400年以上続いている家で、建物自体は建て替えているのでそんなに古くないのですが、現在家が建っている土地含め、近隣に所有している土地はかなり古くからある土地だと聞いています。
夫はその家の長男で、他に男兄弟はいません。
「根絶やし」とは夫が死ぬとか、子供ができないとか、そういうことなの?
私はもうめまぐるしく頭の中で考えていました。
それからしばらく何もなかったのですが、昨日の夜中、また夫が突然寝ながら大きな声で歌い出しました。
「すみのはに・・・とうとうと・・・おかざりを・・・」
もう飛び起きて、夫を揺さぶって起こしました。夫は寝ぼけていましたが、歌を歌っていたことを伝えると、「いやー・・・俺、死ぬのかなあ」と。
私はただただ泣いてしました。
もうお寺でも神社でも、何でもいいのでお払いしてもらおうと思っています。
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