彼女は本当に存在したのか?

5年前のことなんですが、未だに訳が分からなくて、 未だに僕のトラウマになっている出来事です。 

6年前、mixiでとある女性と仲良くなりました。

 仮にA子(25歳)とします。 メッセージをやりとりし、何度か会うにつれ僕は彼女を好きになり、 付き合うことになったんです。

東京(僕)大阪(彼女)で遠距離恋愛な上、 美容師のため連休がない僕に変わって、 彼女が毎週末東京へ来てくれました。

 小さくて可愛く胸が大きくて、 料理が上手で性格がよくて上品で、非の打ち所がない。  

信じられないくらい僕の理想どおりで、僕は彼女に夢中でした。

 今思えば、それは不自然なくらい完璧だったと思います。


付き合って1年近くたったころ、 僕は結婚を意識し始め、お互いの両親に会うことにしました。 

 うちの両親は彼女を気に入ってくれました。  でも彼女はいいところお嬢様なので、 貧乏美容師の僕との結婚を反対されるのでは…と覚悟してたんですが、 ご両親ともお金持ちの嫌な感じが全然なくとても親切で、 結婚もとても喜んでくれました。 途中、部活から帰ってきた年の離れた弟くんは、

 無口でそっけなかったけど、 興味のない僕でも知ってるくらいの超有名高校の野球部在籍だけあって、 とても礼儀正しかったです。 

ドラマに出てくるような幸せ家族で、 こんな仲のいい両親に育てられたからこんないい子が育ったんだな、 とますます彼女が大好きになりました。


それからも、毎週末僕の家にやってくる生活は変わらず、 仲良くすごしていたある日の日曜日。  

早朝、彼女が朝食を作る匂いと音で目が覚めました。 

幸せだな~とまどろんでいると、寝室のドアが勢いよく開けられました。

 ご飯できたのかと思いキッチンに行くと、彼女様子がなんか違います。  

おはよう、と声かけても無視。 

彼女はヤキモチ焼きなところがあるので、 なにかいらぬ心配をして怒ることがよくあったので、 今日もそれかと思い、気にせず話しかけていたんですが、 やっぱり無視。

いつもなら『大好きだよ』というとすぐ機嫌が直るのにな、 昨日何かしたかな… と考えてると、どこからともなく焦げ臭いにおいが。 

 どうやらフライパンをから煎りしている様子。 「火、つけっぱなしだよ!」 と言うや否や、


「思い知ったか!!!!!!!」 


 と彼女は 叫び、熱々のフライパンで僕の頭をガンっと殴りました。


突然のことに呆然。 

 そんな僕を尻目に、彼女は荷物を持って出ていってしまいました。 

それから彼女と音信不通。 普通に考えれば、前日に何か怒らせるようなことを したんだろうと思うのですが、不可思議なことはここからなんです。  


僕はどうしても彼女とちゃんと話したくて、彼女の居場所を探しました。

 携帯は解約されていたので、まず会社に電話をしました。 

しかし、「そのような人は働いておりません」との事。  

次に彼女のマンションへ→もぬけの殻。

 彼女の実家へ→誰もいない。表札も外されてて住んでる形跡無し。 

 実家へお邪魔した時に彼女のお父さんが、

「この家は、私の曾祖父から使ってるものでね。大きいだけが取り柄のボロ屋敷だよ。でも愛着があって、引っ越す気も建て替える気になれなくて」

と言っていたので、手放すなんてちょっと考えられません。


もしかしたら事件に巻き込まれたとか? と色々考えていたら、お父さんに名刺をもらったのを思い出しました。 京都某区役所の職員ということでしたのですぐに区役所に直行。

 しかし、そんな人は働いていないということ。 

 名刺も見せたんですが、 「これはうちの名刺じゃないですね。偽物です」 とまで言われる始末。


もう何が何だかわからない。 

 彼女は何者だ?彼女の家族は何者だ? 残るは、強豪校で一年生ながら 野球部レギュラーを務めているという弟くん。 ツテなんかないけどそのとりあえずその学校へ行きました。

 行って愕然。

 弟くんと初めて会った時、弟くんは部活帰りで制服だったのですが、 その時の制服と、今目の前にある学校の制服とが全然違いました。

 学校名を間違えたということはありません。 

弟くんのスポーツバッグには『○○高校野球部』と書いていたし、 試合中の写真を見せてもらったときも、 ユニフォームに『○○高校』と書いてありました。 もうわけがわかりません。


彼女は僕をだましてた? 

 なんのために?家族ぐるみで? 

 そもそもあれは本当の家族だったのか? 


 突然現れた理想通りの彼女もとても不自然に思えてくるし、 ドラマみたいな絵に描いたような幸せ家族も不自然に思えてきました。 最後の彼女の言葉、 「思い知ったか」 も意味がわかりません。

 彼女や彼女の家族と過ごした時間を思い出すと鳥肌が立ちます。 

何か得体のしれないものと一緒に居てたようで。


彼女ははじめから居なくて、 僕の妄想だったのでは…とも思ったんですが、 両親が「A子ちゃんとの結婚いつなの?」って聞いてきたり、 うちのお店のスタッフに「最近美人の彼女さんカットしに来ないですね」 と言われるたびに、妄想の方がよかったと思います。

 この一連の出来事に説明がつけば、 自分がメンヘラだったというオチでもなんでもいいんです。

 ああ、これはこういうことだよ、と誰かが納得のいく説明をしてくれるまで、 僕はずっとモヤモヤしたままです。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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