1451.「神様に内定決まったよ」明日からと夜の喫茶店にて、珍しく約束を取り付けた君が言った。最初は小さな奇跡の提供かららしくクローバーや虹、綺麗な貝殻などの二人で見た思い出を話しているとポーンと時計が零時を打って、夜風越し君のいた席には真新しい御神籤が置かれ中には待人来ると書かれていた。
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1452.コンビニの帰り葬儀場の看板に君の名前が光っていた。入ると月光の射す棺には君がおり「死んだのかい」「ああ最近」と微動せず懐かしい声で言うので肉まんを手に私達は他愛ない話をしていたが「それじゃまた天国か来世で」と言ったきりすっかり死体となった君は夏夜の中随分と菊の香りが似合っていた。
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1453.解読されたその地上絵が世界最大の純粋無垢なラブレターだという事が判明し、私達の愛に対する感情が太古から変わらないという事も赤裸々になってしまったのだが宛名らしい名前だけが解読できず、「神様の本名では」と噂される読み人知らずとなったその名前には今、鳥や花々が静かに咲いている。
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1454.「次は深海、深海」チカチカした光に目覚めると外では電車が月明かりを裁断し、ぷしゅうと開いた窓から魚の青い影達が部屋へ押し寄せた。どうも今夜の夢らしく、息のできる海は水族館の眠気に似て、私はもう骨になった気でいると遠くから「次は獏、獏」と聞こえる。どうやら誰かの悪夢が助かるらしい。
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1455.電信柱に子供が登っていた。「月が引っかかったんだ」と手を伸ばす先には白い風船が絡まりよく見ると子供は天使らしかった。こんな仕事もするのかと暫く見ていたのだがふと視線を下げると「取れた！」との声と破裂音が聞こえて見上げると白ばかりの紙吹雪が舞い散り、空には月がぽっかり浮かんでいた。
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1456.深夜0時になり、今年亡くなる人達が息を引き取った。亡くなると決まってから君と過ごした一年は余りにも普通で、ふと世界が静まり旗を持った死神が歩き出す。仮面の死者達を連れたパレードは冷たい炎の様で、その中で羊の頭蓋骨を被った君を見つけた時、私は君を見つける為に出会ったのだと納得した。
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1457.望遠鏡で覗いた月には真珠のような美しい古代都市があった。月色と暗闇の誰もいない宮殿を覗いているとその奥の空に三日月が見えたので驚いて目を離すと私は先程覗いた宮殿のテラスに一人おり、どうもこれは月の罠だったらしくスノードームに似た星のない夜空にはチープな三日月が私を見下ろしている。
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1458.祭りの隅、迷い込んだ路地裏にて階段を登っていくと屋上へ出た。そこは生簀になっておりどうもビルをくり抜いた様で中には何匹かの鯉のぼりが泳いでいた。「龍になるんだよ」といつの間にか現れた子天狗が言い、放っていた鯉のぼりの餌らしいドロップをくれたので遠い光を眺める私達の夜は苺味だった。
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1459.今朝死んだ地獄を春に埋めましょう
「温かい地で眠る君は無限暗闇花もなき」
午後死んだ風鈴を夏に埋めましょう
「向日葵の青空は解体新書の夢を見る」
夕方死んだ彗星を秋に埋めましょう
「いつか海だった壜の塩達はきらきらと」
深夜死んだ詩人を冬に埋めましょう
「月の裏側、不眠の夢達」
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1460.蚤の市にて古い月を買った夜目を覚ますと枕元に二匹の小さな兎がいた。「隣に越してきました」と小さな包みをくれたので見るとお餅が入っており、温かい香りがする。お返しに庭の金鳳花を渡すと嬉しそうに手を振りながら月へと戻り、それ以来兎達は現れてないが偶にその月からはあのお餅の香りがする。
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