ショートショート 991~10002020.04.29 11:11991.過去の自分に丸付けをします。「間違っていない、間違っていない」呪文は重く、結果を見つめ、問題文の理解度からは目を逸らす。手が震えるので判子で花丸押さえます。答えの許容範囲は広く、花一匁の蚊帳の外。横断歩道のアスファルトにいるのが何かも知らず、とっくに迷子のなり方を忘れてし...
ショートショート 981~9902020.04.29 11:10981.ずっと昔に売り飛ばした幸福を、君が僕にと持ってきた。それは一等美しく、何故手放したのかと思ったが、成る程僕が持つと嫌に燻んで一等無意味になってしまった。「一寸待って」僕はそれを見事なブローチに仕立て上げ、君の胸元へ付けた。有難う、そう微笑む君を見て、やっと幸福の意味を知っ...
ショートショート 971~9802020.04.27 05:54971.海の底へと逃避行。緑の陽が踊り、珊瑚礁の間にいつ落としたのか蛍石が座っていた。砂を掬うとお祭りで買った指輪やビー玉、届かなかった瓶詰めの恋文が転がっている。果てよりも続く廃線を辿り、影の冷たい処にある沈没電車へ乗り込んだ。ここは私だけの海。思い出から零れ落ちた、私の優しい...
ショートショート 961~9702020.04.20 05:49961.部屋にスポットライトの様な月明かりが差し込んだ。それは金色の丸で床を踊り、輪郭がぶるぶると震えている。不思議に思い、ダーツの矢をその丸へ投げ込んだ。ぷすん、動きを止めたそれは丸でなく直角三角形で、それが高速に回っていたらしい。はっとして空を見上げると、月も同じ形で止まって...
ショートショート 951~9602020.04.13 05:43951.処方された薬を開けると中からひよこが現れた。説明書には飼育法しか書かれておらず、狼狽る私を尻目にひよこは部屋を咲く様に走り回っている。そうして無邪気に私の手へ潜り込んで寝てしまった。「君は信用しすぎだろう」久々に上がる口角に、"幸福は親しい者から齎される"そんな言葉を思い...
ショートショート 941~9502020.04.06 05:32941.はないちもんめで売られたあの子あの子の愛した野花を摘んで帰ってくるのを待っているビー玉 貝殻 おもちゃの指輪あの子は幾らで買えるかな・・・942.聖戦前夜の逃亡劇、僕たちは非常ベルの音に髪を切り裂き、空へ伸びる梯子を登った。黄金色の三日月は僕達を乗せて空を漕ぐ。「僕達だけ...