611.誰かが神様を怒らせた。天地を七転八倒シャッフル地獄に変化させ、僕は浮遊の最中、日本が三分割に、英国が仏国へくっつく様を見ていた。
どこかから僕を呼ぶ声がする。
前方から泳いできたのは小学生の頃転校して行った恋人だった。嗚呼なんと素晴らしき天変地異!二度とこの手を離すものか!
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612.諸事情にて大変な事になってしまった。てんやわんやで九死と思ったその時、ある人が現れた。一か八か、かくかくしかじかと訳を話すと「任せなさい、その云々は得意分野だ」と胸を叩いた。斯くして私達は助かったのだ。
ありがとう、名前はと訊ねると「名乗るほどの者では」と去っていった。
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613.「四次元 始めました」
その瞬間無機物は一度無い物とされ、有機物は所有者の手により一夜という無限の元優しく引き伸ばし、縮め捏ねられ更新された
…不思議な夢を見た気がする。
支度をしていると財布がない事に気が付いた。しまった、昨日に忘れてきたのか。仕事前に昨日行きの電車に乗らないと。
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614.夏のせいか、描いた油絵が少し溶けてしまった。これで3日目だ。額縁から垂れた色が下の絵に向かっている
ふと違和感を覚えよく見ると絵の具が下から上がっている事に気付いた
上下と伸びる肌色はまるで手と手の様で、ならばと大きな額縁に二つの絵を入れてみると不思議と馴染み、溶ける事はなくなった
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615.彼は真理であった。見つけた訳でも探した訳でもなく、彼こそが真理だったのだ
彼は死んだ。知らぬを正義とする人間が泥を投げたのだ
哀れな真理は土塊となり、意味の無さは時代の変化より強硬である
墓石には「e」を
目を閉じて、彼を見よ
耳を塞ぎ、人を見捨てよ
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616.「これ全部、**のお墓なんですよ」
現地の人がそう言うので私も手を合わせた
夏にまたその土地へ行くとそこに墓、木など一本も生えていない
狐狸に騙されたか
だがあの人の表情が嘘だとは思えないので、きっと此処は何かの墓場なのだろう。私はもう一度手を合わせた。また来年も来るだろう
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617.「すまないね、僕の体は案外落ち着きがなかったみたいでね。今はパニック状態らしい。探すにも目は無いし、呼ぼうにも耳もなし。ふむ困ったね」
と困った様子なくハハハと笑うのは巷で噂の走る首無し男の首の方だった。
「紅茶を飲ませてもらえるかい?久しぶりなんだ」首はいつまでも呑気らしい。
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618.蜂がアルファベットを集めているのは有名な話で、巣によってフォントが違っており、また六角形という事もあり文字としての解読はされていない。勿論読んだ気にさせるような本や資料も少なくあるが、きっと解読出来たとして蜂の言葉と意味と発音として人間が理解する日は来ないのだろう。
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619.林檎の種をたくさん食べよう
そうしてお臍から芽が出て、私は小さな林檎の樹となるのだ
こんな素敵な話がほかにあるかい
生きているうちにしか死んだ後の事を考えられないというのは、生者の特権である筈だ
さあ林檎の種を食べよう
そして善悪構わず誰かの人生に悪戯してやるのだ
私はきっと甘く実るよ
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610.君のくれた花束に火をつける。
花の色と香りと、火の熱と輝きを目に焼き付ける。深く息を吸い、記憶に留める。私はこの花束以外に火を点けない事を誓おう。
この火は虫ピンだ。釘だ。刺青だ。
この風景は私の中で唯一無二となる。
私はこの様子を忘れないだろう。
私の中の隅に永遠に燃える思い出よ。
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