461.未来へ行くと男女共に皆同じ顔をしていた。どうも未来では、優良な人間の腸内細菌を移す事でより良い人間を創る事に成功した。しかし何度も繰り返すうちに個体のオリジナリティは均等化され、遂には金太郎飴の様な個体しか産まれなくなったと言う。
その為か皆、個を取り戻す様な奇抜な格好をしていた
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462.陽だまりの匂いのする彼女の周りにはいつも猫がいる。何処からか湧き出てはいつも彼女を占領しているのだ
ある日彼女が髪を梳かしていると、まるで櫛に押し出されたかのように髪から猫が出てきた。無事着地した猫はそのままゴロゴロと彼女の膝へ座った。猫は何処からでも入り込むとはよく言ったものだ
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463.彼女は猫かもしれない。
自由と魚が好きで、体が柔らかく、そして一度、僕の目の前でトラックに轢かれ死んだのだ。
僕は確かに砕けた彼女を見たのだけど瞬きをしたら彼女は元通りになり助けた猫を抱えていた。
「彼女の魂はあと何個?」家族になった猫に聞いたけど、意味深に瞬きをするだけだった。
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464.夢を見た。
暗闇の中で彼女は頬をいたく膨らませ、口を押さえていた。薄らと頬が暖かく光っている。
─彼女は限界だったのだ。私が抱きしめると彼女の指の隙間から光が溢れ、橙色の暖かな鬼灯達が湧き出した。鬼灯と共に浮かぶ彼女に来世を叫ぶ。
病床にて彼女が亡くなったのは丁度その夜だった。
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465.深夜、気付くと幽体離脱をしていました。やたら軽い体を踊らせ、ぷあぷあと浮いているとあることに気づきました。全てが止まっているのです。星も車も、人も風も皆すべて
驚いて僕は家に帰って自分の体に入ろうとして、その時やっと気付きました。
僕は死んだんです
ぶら下がる僕だけが揺れている
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466.隕石と共に現れたのはカーニバルだった。白と黒に着飾り7つのラッパを響かせる。紙吹雪を舞わせ象やライオン、龍と共に行進する。
─終末だ。なんとめでたい終末だ!
財布も紙も投げ捨て皆々歩き出す。隕石は音なく全てを削り、魂のみ踊る。
残るは空っぽになった地球のみ
彼らは何処へ向かったのか
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467.知り合いに会った。
久しぶりだと語り合うと互いに共通点がない事に気が付いた。出身地も学校も仕事も何一つ共通していないのだ。「初対面はいつだったか」彼が見知った仕草で考え込む
そして互いに気が付いた
ずっと昔に長い間互いを夢で見た事があるのだ。
「初めまして!」僕は夢の親友と握手をした
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468.砂漠の真ん中には巨大な骨がある。
気高く、また清貧に眠るそれは日陰となり生き物を休ませ、頭蓋骨に溜まった水はオアシスとなり、丁度尾っぽは南にしている為旅人の道標となっている。皆はその骨に敬意を払い深くお辞儀をする様になった。
それが立派なクジラの初代王だと言う事は誰も知らない話だ。
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469.私はなかなか魔法の切れないシンデレラを連れタンデムをしました。
喧しく風を切るドレスを後ろに、サングラスで街灯の光を弾きます。
「私、帰るね」
海岸沿い、新鮮な朝日を浴びシンデレラが言いました。
「義母さんからすごい電話掛かってた」笑う彼女の顔は、昔懐かしい無邪気な顔をしていました
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470昨日録画した夢を再生する。ビデオデッキはアナログな音を立て画面を揺らし色付いた。表れたのは知らない街を散歩する風景で、そしてやはり隣にはあの子がいた
最近夢に話した事もないクラスの子が出るのだ。音が無いので会話はわからないが、映る彼女は笑顔で、
とりあえず休み明けに話しかけようと思う
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