暗すぎる外

以前私が働いていたのは家から5分もしない小さなコンビニです。深夜ですが・・・

その日も自転車を止めて中に入ると、店員が一人居ましたが、客は居ませんでした。

それもそのはず、時間が時間です。私は店員に声をかけました。

「ごくろうさま」

「あ、ごくろうさまです」

若い彼女はこんな時間だと言うのに元気な声で、私に返事を返してくれます。

好感の持てる人物だなあと思いながら、特にする事も無い仕事に取り掛かろうとしたその時。

「あ・・・あれ、おかしくありませんか・・・?」

その彼女が詰まったような声を上げました。彼女が指差すのは、外。外―――異常は在りません。

暗闇が広がるだけで、時間は深夜、特に不思議は無い。

「別に何も・・・」

その時瞬間的に理解しました。暗闇「過ぎる」のです。いくら深夜と言えども、真っ暗と言う事は無いはず。

住宅の影、自動販売機の光―――何一つ確認できませんでした。まるで、巨大な黒い布幕を被せられた場所のように。

「・・・取り敢えず外に出ようか」

「あ・・・はい」

しかし、入る時はすんなり入れた扉が、全くびくともしないのです。

二人とも精一杯力を込めて押し引きするのだが、無駄でした。

朝になるまで、待つか、どうするか―――・・・不安そうな彼女の横顔が、

私を余計に責めたてます。その時、特有の臭いを放つ液体がガラスを伝ってくるのに気付きました。

ガソリン。

誰かがこの建物を焼き尽くそうとしているのか!パニックになりながらドアを蹴っていると、

コンビニを覆っていた幕?の隙間が縦に10cmほどサッと開き、そこから外の世界が見えました。

次の瞬間、その10cmの隙間を、人影が遮って・・・

そこでもうダメだと思い目を瞑りました・・・


目を開けると、自宅の布団の中。なぜか上半身裸のジーパン一枚で寝ていました。

夢か・・・とも思ったのですが、あとで彼女に聞いてみるとあの日のことを覚えていたようで、

同じく意識が遠くなった後、目を開けたら自宅だったそうです。

私と同じ上半身裸の格好だったそうです。

宇宙人の仕業としか思えないのですが、知らない間に拉致されてたのでしょうか・・・

あれが何だったのか、今でも分かりませんが、彼女とは良いお付き合いをさせてもらっています。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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