「真実を述べます旦那様、その代わりペンと紙を頂けませんか?」
望み通りのものを渡すと男は話し出した。
私はね、魔術書の解読に成功したのです。
しかし紐解いていくとそれはどうも、奇想な数学化学なようで。
例えばその魔術を唱えたり書いたりしてその物に己が出来る事を気付かせるんです。
燃やす呪文なら「中に浮かぶ塵の摩擦と酸素によって燃える事が出来る」、なんて具合に…
試しに私は紙に「浮く数式」を書きました。
するとどうでしょう、あぁ、見事に浮いたのです!
大変な発見だと私は学者たちに見せに行きました。
すると彼らはあろうことか私を指差し「魔術師だ!」と叫び…
このザマですよ。
牢獄で男が笑った。
「さて、ありがとうございます。此処を去る前に私の事実を誰かに言えてよかった。
私は全てを通す風になりましょう」
突如牢獄の中で突風が起こった。
目を瞑り、開けると男はおらず、ただそこには理解解読共に不能な、まるで魔方陣のような数式の書かれた紙が一枚落ちているだけであった。
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