花畑の部屋

中学生の頃の話。

自分の部屋は二階にあったんだけど、階段を上がる時にいつもその段数を数えながら上がってた。

特に意味も無くて、まぁ癖みたいなもの。

中2の秋口くらいだったと思う。

学校から帰って、いつもの様に段数を数えながら階段上がると、

14段のはずが、何故か15段ある。

その時は数え間違えたんだと思って、気に留めることもなく、

階段から廊下を右側に進んで自分の部屋の扉を開けた。

すると不思議なことに、そこは自分の部屋とは反対に、廊下を左に進んだ先にあるはずの弟の部屋。

 今度はちょっと驚いて、一瞬唖然としたんだけど、

部活で疲れてたからボーッとしてたんだろうって事にして、弟の部屋を出ようと閉めたばかりのドアを開くと、

そこは廊下ではなくて、一面の花畑。

抜ける様な青空の下、赤と黄色の花がどこまでも絨毯みたいに敷き詰められて、遠くの方に山が白く霞んでた。

さすがにビックリしてドアをすぐ閉めたんだけど、気になって、もう一度開いてもやっぱりそこは花畑。

もう訳が分からなくなり、凄く怖くなってきた。

でも唯一の出口であるドアが花畑に通じてしまい、その花畑に出ていく勇気は無かったから、弟の部屋から逃げ出せない。

それで窓から出ようとカーテンをめくると、見慣れた自分ちの庭、いつも弟の部屋から見えるはずの景色だった。

一安心して、屋根を伝って自分の部屋の窓の前へ。運良く鍵も開いていて、なんとか中に入れた。

花畑だったらどうしようと思いながら、廊下に出るドア開けてみたけど、やっぱりそこは普通の廊下。

弟の部屋にもう一度行って、ドアを閉め、もう一度開けたけど、

花畑なんかどこにも無い。階段の数も数えたけどこれもやっぱり14段。

いつのまにか全部が元に戻ってた。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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