91.こっくりさんをしたのだが、「おいでください」と言うとNOに動く。
居るじゃないか!と言うと渋々といった様にYESへ向かった。
しかしどんな質問をしても「かえりたい」「ねむい」しか答えない。
どうやら引き篭もり気味のこっくりさんだった様だ。
・・・
92.「よく疑いもせずにドアを開けられるね。どうせ扉の先には知った風景が必ず広がっていると思っているんだろう。僕はもう無理だ。無理だよあれを見てしまったんだから。
あんな真っ赤、真っ赤な…地獄!」
これは精神病院から脱走した友人が、入院する前に叫んでいた事だ。
未だに友人は見つかっていない。これは本当に脱走なのだろうか。
・・・
93.その廃墟にいたのは、首から上が一輪の「花」で出来た女だった。
噂にあった「花のような彼女」とはこの異形の事なのだろう。
ふわり、と不思議な匂いがした。
頭が眩み、抵抗虚しく匂いの元へ足が動いていく。
そしてその先には満開になり、歯をむき出しにした彼女が手を広げ待ち構えている。
・・・
94.悪夢に悩む僕のために父が獏を飼ってきた。
「そんなもの迷信だ」そう思っていたのだが、その日から不思議と悪夢を見なくなった。
しかしある日の朝、目が醒めると僕の隣で獏が冷たくなっていた。
死因は胃の破裂だった。
しかし内容物は無く、原因も不明。
僕の親友は何を食べたのだろうか。
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95.無邪気な子供たちは知らないんだろうな。
君達がキャアキャア言いながら楽しんでいるキャンドルセレモニーの本当の意味が。
そのキャンドルセレモニー及び蝋燭の儀式により、会場の下に眠る邪神の心臓が一層強く、脈を打ちはじめた。
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96.「雨宿りさせて下さい」
そう言って彼は私の下に入ってきた。
「いやあ酷い雨ですな。貴方はいつからここに?」
『そうですね、ざっと50年程…』
それから何十年と経ったが彼は相変わらず私の…柳の下にいる
「雨、止みませんなぁ」
『そうですなあ』
止んだら貴方は成仏してしまうのだろうか。
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97.死神が刈り取っているものは、死人の持つこの世への未練らしい。
「だからお前は死神から逃げるなよ。
肉体はどうしたって死ぬんだ。」
俺みたいになるなよ。
そう言ってその浮遊霊はまた、死神を探しに彷徨っていった。
・・・
98.パペット人形師の友人が自殺した。
しかしその状況がどうもおかしく、両手に何故かボロボロになった人形をはめ、また両手に包丁を持っていた。
そして「うっかりと」とでも言うかのような浅い傷で頸動脈を傷付け死んだのだ。
「この子達は僕の恋人だ」
これは彼が死ぬ前日に言っていた言葉である。
・・・
99.「朝机の上に置いてあった」
そう言って彼が見せてきたメモには、
急いで書いたであろう乱れた文字で
『もうそろそろ代わってください』
と書かれていた。
「何のことだかわかんないよなあ」
そう言いながらそれをビリビリに破る彼は不気味な程の笑顔だった。
・・・
100.ある雪の降る寒い日、百物語をしていた若者が酸欠で亡くなった。
「これは呪いだ」「まぬけな事故だ」
色々な議論が飛び交う中、「それはこっちが聞きたいよ」と聞こえない声で
当事者が呟いた。
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