影が犬

小さい頃公園で遊んでたら、見た目は人間なのに影が犬なお兄さんに逢った。

1人かと聞かれたので、お母さんが迎えに来ると言ったら、来るまでここにいると言う。

気にせず遊んで、迎えが来たので振り返ったらお兄さんはいなかった。

それから中学生になるまで、4回ほど逢った。いつも1人かと聞かれた。

いつも誰かと合流するまで、近くにいて、振り返るといなかった。

最後に逢った時、お兄さんは全然変わらぬ姿で犬の影もいつものまま。

「もうすぐ大人だね。本当はもっと前に連れてくべきだったけど、出来なかったなぁ」

と苦笑いして、

「元気でね」と去っていった。

初めてお兄さんの背中を見た。寂しそうだった。


昨日、娘が「わんこのお兄ちゃんに逢ったよ」と楽しそうに言った。

…あの人なんだろうか。 

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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